弱者こそが世界を作る

ナナシズム

人間という種のもつ例外的な適応性は、
弱者の特異性に負うところが大きい。
新しいもの…それが新しい土地への移住であれ、
新しい生活様式の開始であれ…を見出し、
それを習得するという困難で危険な作業に取り組むのは、
社会の前衛に立つ者ではなく、後衛に位置するものである。
新しいものに最初に飛びつくのは
不適応者、失敗者、逃亡者、追放者たちである。
彼らが試行錯誤の末に未知のものを押さえ手なづけてはじめて、
強者がやってきて、それをものにする。
新しいことに飛び込むのは、多くの場合、
耐え難く不快な日常の単調さからの逃避である。
新しい言葉に必死に耳を傾け、あらゆる約束にしがみつき、
救済者のまわりに集まるのは、そうした弱者である。