【ロシア】プーチン大統領発言が波紋、核使用「準備できていた」…米欧威嚇、核軍縮を模索する国際社会への挑戦[03/19]

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　ロシアのプーチン大統領がテレビ番組で、親ロシアの政権が倒れた昨年２月のウクライナ政変の際に、核兵器使用の「準備ができて
いた」と発言したことが波紋を広げている。米国と並ぶ核大国の指導者がウクライナ危機という地域紛争に絡み公然と核使用の可能性に
言及し対立する米欧を威嚇したことは、核軍縮を模索する国際社会への挑戦ともいえる。

　▽団結の象徴

　「これは外国がロシアに仕掛けている情報戦争の一環だ」。ロシア外務省幹部は１６日、プーチン氏の発言が国外で批判を受けている
事態を受け、こう反論した。

　だが核兵器を「情報戦」に利用したのはむしろロシアの方だ。ソ連崩壊で超大国の地位を失ったロシアにとり、核戦力だけが米国と
張り合える唯一の力の源泉。「核使用」発言の背景には、欧米の制裁を受けロシア経済が失速する中で、外からの脅威をあおり国内の
結束を図る思惑がある。

　「核」と「反米」はソ連時代からロシア国民の心理に組み込まれた「団結の象徴」（モスクワの外交筋）といえる。プーチン氏は昨年８月
にも、若者との対話集会で薄笑いを浮かべつつ「核大国であるロシア」とは軍事衝突しないほうがいいと述べていた。

　▽視聴率４０％

　今月１５日にロシア全土で放映された、ロシアによるウクライナ南部のクリミア半島の一方的編入を振り返る特別番組「クリミア、
祖国への道」は、ロシア通信によれば４０％の視聴率を記録した。

　プーチン氏はインタビューに答える形でクリミア編入の詳細を語った。そして質問者の「ロシアの核戦力を戦闘態勢に置いたのか」
との問いに対し、「われわれにはその準備ができていた」と明言した。番組は政権の意向に沿ってつくられ、質問内容もすべて政権の
指示を受けたとみられる。

　だが「核使用発言」は、イランや北朝鮮の核保有を食い止める多国間の枠組みに加わるロシアの立場を弱める恐れがある。
「大統領は何も新しいことは言っていない。ロシアの軍事ドクトリンに従う原則を強調しただけだ」。外務省幹部は火消しに追われた。

　▽米国のジレンマ

　「核兵器なき世界」を掲げ、世界の核弾頭の９割超を保有する米ロ間の核軍縮こそが最優先かつ現実的な道だと主張する
オバマ米政権が、プーチン氏の発言に警戒を強めているのは間違いない。

　しかし、米国務省のサキ報道官は１６日、プーチン氏が「より攻撃的な行動」を取る用意があったと自ら認めたと批判したが、
「実際はそうしなかった」と踏み込んだ論評を避けた。

　ロシアが核戦力の近代化を進める中、米議会では、ロシアと合意した新戦略兵器削減条約（新ＳＴＡＲＴ）の履行予算の凍結や、
ロシアと国境を接する北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）加盟国への戦術核配備を求める声まで出ている。

　オバマ政権には、プーチン発言が注目されれば、難航する核軍縮への「逆風」になりかねないとのジレンマがありそうだ。
（モスクワ、ワシントン共同＝松島芳彦、井上智太郎）

ソース（共同通信）　http://www.47news.jp/47topics/e/263189.php
写真＝１６日、ロシア・サンクトペテルブルクでキルギスのアタムバエフ大統領との会談中、笑顔を見せるロシアのプーチン大統領（ロイター＝共同）
http://img.47news.jp/PN/201503/PN2015031601002263.-.-.CI0003.jpg
図表＝核弾頭数比較
http://img.47news.jp/47topics/images/TR2015031700947.jpg