【イラク】マリキ首相の退陣不可避に、所属政党も離反…同氏の後ろ盾だったイランや米国も、アバディ氏次期首相就任を支持[08/15]

Hi everyone! ★

　イラクでマリキ首相の退陣が不可避な情勢になってきた。マリキ氏が率いてきたイスラム教シーア派のアッダワ党は14日までに、
次期首相として同じシーア派のアバディ連邦議会副議長が「合憲的に指名された」として、新政権樹立への協力を各党に呼び掛ける
声明を発表した。続投に固執するマリキ氏は身内の信任も失った格好だ。マリキ氏の後ろ盾だったイランのほか、イラクに大きな
影響力を持つ米国もアバディ氏の次期首相就任への支持を示している。
　
　アッダワ党はマリキ氏の基盤である与党会派「法治国家連合」の中核政党。マスーム大統領が11日に首相候補に指名したアバディ氏は、
本格的な組閣作業を始めた。同氏はマリキ氏と同じくアッダワ党に属する法治国家連合のメンバー。イラクではシーア派に比べ少数派の
イスラム教スンニ派やクルド人の勢力も14日までにアバディ氏支持を相次いで明かした。

　イラクの中・北部ではスンニ派の過激派武装組織「イスラム国」が勢力を広げ、少数派のヤジド派など一部住民を迫害している。
宗派・民族間の対立を乗り越える政権を樹立できるかどうかが難局打開のカギだ。

　イラク戦争後の2006年から２期８年にわたり政権を率いたマリキ氏には、過度のシーア派優遇が宗派・民族対立を悪化させたとの
批判が強く、スンニ派やクルド人勢力が反発。「イスラム国」の拡大を許したマリキ氏にはシーア派からも退陣論が強まっていた。

　イラクのシーア派の最高権威シスタニ師は13日、マリキ氏に退陣を求めた１カ月以上前の書簡を事務所を通じ公表した。これも
シーア派の姿勢に影響したとみられる。

　国外からも首相交代を既定路線とする動きが相次いでいる。ロイター通信によると、シーア派大国イランの最高指導者ハメネイ師は
「イラクの新首相指名で新政権が樹立され、扇動者たちへの教訓となることを望む」との声明を発表した。マリキ氏が頼りとしたイランも
同氏を見限った形だ。

　米国はオバマ大統領らがアバディ氏に相次ぎ電話をかけ、異例の対応で新政権樹立を後押ししている。スンニ派政権のサウジアラビア
も首相交代を支持。国連安全保障理事会は13日、アバディ氏の首相候補指名を歓迎する報道声明で「包括的な政府の構築に向けた
重要な一歩だ」と指摘した。

　一方、マリキ氏はマスーム大統領がアバディ氏を首相候補に指名したことを「憲法違反」と批判。連邦裁判所の決定があるまで退陣を
拒む構えをみせている。マリキ氏は軍や治安機関に影響力を保つとされるが、すでに政治的に孤立を深めており、クーデターのような
動きは困難とみられる。

ソース（日本経済新聞）　http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H1M_U4A810C1FF2000/