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産経抄ファンクラブ第213集
- 204 :文責・名無しさん:2016/01/01(金) 07:24:55.71 ID:xssUeFol0.net
- 【産経抄】365日の区切りの「ひと休み」 元旦に抱く感慨 1月1日
明けましておめでとうございます。それにしても、お正月には、どんな意味があるの
だろう。作家の井上靖さんは、「元旦に」という詩に書いている。
▼「人間の一生が少々長すぎるので、神さまが、それを、三百六十五日ずつに区切っ
たのだ。そして、その区切り、区切りの階段で、人間がひと休みするということだ」。
昭和32年の元旦、50歳を間近にした井上さんが抱いた感慨だった。
▼「ひと休み」の1日、井上家には大勢の客が訪れて、酒宴となるのがならわしであ
る。ある年の宴(うたげ)が終わり、最後の客を玄関で見送った後のことだ。何かの拍
子に笑い始めた、4人の子供たちをひどく叱った。
▼「敷地を出るまで決して笑うな。客は自分のことを笑われたと思うから。ひょっと
したら、井上の家を恨むこともあるかもしれない。笑われる立場にない人は、自分が笑
われたと思わない。しかし、世の中にはそうではない人もおり、邪気のない笑いが人を
傷つけることがある」。ドイツ文学者の長男、修一さんが小紙に語ったエピソードであ
る。
▼「文壇の紳士」と呼ばれた井上さんの気配りは、毎年秋の一夜にも発揮された。ノ
ーベル文学賞の有力候補とあって、自宅前には大勢の報道陣が陣取った。「落選」が伝
えられると、井上さんは外へ出てくる。「力及ばず、申し訳ありません」。元新聞記者
の井上さんは“門前会見”で、ユーモアをまじえて「おわび」を繰り返すのだった。そ
の後は、駆けつけた友人たちと記者を招き入れ、残念会の宴が深夜まで続いたという。
▼井上さんは果たせなかったが、今年も、日本人のノーベル賞受賞ラッシュを期待し
たい。もちろん、そんな初夢には、村上春樹さんの文学賞受賞も含まれている。
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