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産経抄ファンクラブ第212集

609 :文責・名無しさん:2015/12/11(金) 05:23:12.84 ID:4MMDwsCL0.net
【産経抄】食いものは一日で無くなる 12月11日

 野坂昭如さんは、14歳で酒の味を覚えた。昭和20年6月の神戸の大空襲で、養父は亡く
なり、養母は大やけどを負う。自宅の焼け跡を掘り返すと、日本酒が出てきた。

 ▼空腹のあまり、夢中で飲んだ。戦後、芸能プロダクションのマネジャーやコント作家
など、食うためについた職業は数知れない。やがて人気作家となり、歌手としてデビュー
し、選挙にも出た。その間、酒との縁が切れたことはない。

 ▼平成15年5月、在宅中に脳梗塞で倒れた。「当然の報いか」と、野坂さんは振り返
る。以来、夫人の手厚い介護のもとで、リハビリに励んできた。テレビをぼんやり眺めて
いると、「胃袋番組」のたれ流しが目に余る。行列のできる店、名人の作る逸品、女性タ
レントのムチャクチャな食べ方、どれも気に入らない。今年3月まで、毎日新聞に連載し
ていた「七転び八起き」では、しばしば食を話題にして、憤慨している。

 ▼野坂さんは、終戦の日から1週間後に、義理の妹を亡くしている。栄養失調だった。
昭和43年に直木賞を受賞した、野坂文学の原点ともいえる『火垂(ほた)るの墓』は、当
時の体験をもとにしたものだ。

 ▼空襲で両親を失い、洞穴に暮らす幼い兄と妹の物語である。やせ衰えた妹が、兄を相
手にままごとを始める場面がある。「手近の石ころ二つ拾い、『兄ちゃん、どうぞ』『な
んや』『御飯や、お茶もほしい?』」。ほんの2カ月前まで、兄妹の母親は桃を砂糖で煮
て、カニ缶を開けてくれていたというのに。

 ▼昨日、野坂さんの訃報が届いた。85歳だった。「食いものは一日で無くなる」。焼け
跡闇市時代の飢餓体験を片時も忘れなかった野坂さんは、飽食の時代が続くのを疑わない
日本人に、警鐘を鳴らし続けた。

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