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産経抄ファンクラブ第201集
- 450 :文責・名無しさん:2014/10/05(日) 07:04:07.38 ID:HCNvdkU50.net
- 【産経抄】
10月5日
恐妻家であれば、「山の神」は口慣れた言葉かもしれない。俗語で妻のことを指す。
なぜか。いろは歌の「有為の奥山今日越えて」に語源を求めた説がある。「山」の上
(かみ)にあるのは「奥」。だから妻(奥さん)という(『日本語源広辞典』ミネルヴァ書房)。
▼各地に伝わる山の神も、多くは女性である。容姿は醜悪でねたみ深い。地方に
よって醜いオコゼを山の神に奉じたのは、嫉妬を恐れた昔日の名残という。田畑が
潤うのも山からくだる水があってこそ。日本の山岳信仰は、命の源泉たる山への畏
敬にほかならない。
▼突如の噴火で戦後最悪の犠牲者を出した御嶽山は、日本有数の霊山として知
られる。御嶽神社の奥社は大宝2(702)年の創建と古く、修験者は登拝前に100日
の潔斎が義務づけられたという。江戸後期に登山道が開かれるまで、一般人の入山
は禁忌とされた。
▼登山ブームに沸く昨今は、山の神域と里を画す一線がどこにあるのか知るよすが
もない。犠牲者の多くが神社付近に集中していたのは何とも皮肉だった。行方不明者
の捜索が難航する中、西から台風が迫り、山頂は雪の季節が近い。今は一人でも多
くの無事を祈ろう。
▼かつて里人がふもとで参拝できる「里宮」の役割は小さくなかった。われわれの先
祖は「山を畏れよ」という警告の鐘を方々に配していたのだ。科学の力で噴火の予知
がかなうときがいずれ来よう。それでも人が打てる最善手は、早逃げの一手しかない
のも事実だ。
▼柳田国男は民俗学の役目をこう説いた。「人を誤ったる速断に陥れないように、で
きる限り確実なる予備知識を、集めて保存しておきたい」(『先祖の話』)。われわれは
耳をさとくして、どこかで鳴る鐘の音に気づくしかない。
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