【鉄道】通勤電車が全席指定に　鉄道各社「通い方改革」が浮き彫りにする東西格差

鉄チーズ烏 ★

　鉄道各社が通勤・通学客向けに全席指定座席の導入を進めている。関東地方の私鉄が相次いでサービスを開始する中、関西では京阪電気鉄道が今年８月、初めて運行を始める。苦行のような通勤・通学が少しでも楽になるならありがたいと思う人は多いはず。官民挙げての「働き方改革」が進められる中、「通い方改革」も動き始めた。だが、その裏には関西経済の寂しい事情も。

■乗客の大幅減

　「一時期に比べかなりお客さまが減った。ただ時間帯によっては、まだラッシュが厳しい。その緩和につながれば」

　今年３月３０日、京阪電鉄の親会社、京阪ホールディングス（ＨＤ）の定例記者会見で加藤好文社長は、全席指定列車「ライナー」導入の背景と狙いを説明した。

　運賃とは別に利用料金３００円～４００円が必要だ。８月２１日から、オフィス街の「淀屋橋」行きで午前７時１５分ごろの枚方市発、同８時２０分ごろの樟葉発の２本を運行する。列車は既に運行している「８０００系」を転用する。

　こうしたサービスが可能になったのは、沿線の人口流出や高齢化に伴う乗客数の減少だ。バブル期の平成３年度の年間４億１９００万人をピークに、２７年度は同２億８８００万人にまで落ち込んだ。

　これに伴って便数を減らした結果、ダイヤに増発の「余地」が生まれたわけだ。

■関東が先行

　全席指定列車は関東地方の私鉄が先行している。

　埼玉県南西部から横浜・みなとみらいまで結ぶ西武鉄道、東京メトロ、東急電鉄、横浜高速鉄道の４社は３月２５日、座席指定の列車、通称「Ｓ－ＴＲＡＩＮ」の運行を開始した。

　西武の新型通勤車両「４００００系」を使用。２人がけの座席を９０度回転させることで、横向きのロングシート、前方向きのクロスシートに切り替えられる。

　平日は朝と夕方に所沢（埼玉県所沢市）－豊洲（東京都江東区）で３、４本運行。土日、祝日は観光客の呼び込みをねらい、西武秩父（埼玉県秩父市）－元町中華街（横浜市）を２、３本運行して結ぶ。

　また神奈川県南部と都心をつなぐ京浜急行電鉄は５月１日から、全席着席保証ながら自由席で運行していた上り列車「モーニング・ウィング号」、下り列車「ウイング号」を全席指定に切り替える。

■東西で差も

　関東では同時期に指定席列車導入が相次いだが、京急の広報担当者は「横並びではなく、以前から改善を準備していたものがたまたま今の時期になった」と説明する。

　在京の鉄道関係者の１人は「職場まで運べば良いという大量輸送の時代とは変わってきている。乗客の権利意識も変化してきた」と話す。運賃を払っているのに、サービスがないどころか不快な時間を強いられることへの不満が背景にあるという。

　関東の多くの路線は沿線人口が増えており、京阪のように「ダイヤが空いてきたから」導入したというわけではないのだ。

　「通い方改革」の旗手である「ゆったり通勤できる電車」から見えてくるのは、関西経済の地盤沈下、東京一極集中だ。

2017.5.8 07:00
http://www.sankei.com/west/news/170508/wst1705080006-n1.html
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