【東京】関東大震災から９２年　遊女の悲劇忘れない　台東区の吉原観音で法要

坊主 ★

引用元：東京新聞 2015年9月2日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20150902/CK2015090202000166.html

　下町を火の手が襲った関東大震災では、江戸時代から続く遊郭「新吉原」の遊女たちが次々と池に飛び込み亡くなった。
その遊女たちの霊をまつる吉原観音（台東区千束）で一日、弔いの法要があった。
悲惨な歴史を語り継ぐ決意をこめ、往事の記憶をわずかに残す境内の池に金色のコイを放流した。　（丹治早智子）

　日本橋にあった遊郭の吉原が明暦の大火（一六五七年）後に現在地へ移ったとき、周辺にはたくさんの池があった。
遊女らの信仰を集めた吉原弁財天は、そのうちの一つ、弁天池のほとりにまつられた。

　郭（くるわ）の周囲には「お歯黒どぶ」と呼ばれる大溝があった。遊女を外界と隔絶し、逃亡を防ぐために築かれた。
これが、関東大震災では、火の手が上がる郭からの避難を阻んだ。
逃げ場を求めた遊女たちは弁天池に飛び込んだ。死者は四百九十人に上った。

　その霊を弔う「大震火災殃死（おうし）者追悼記念碑」は震災から三年後に建立された。
碑は高さ二・五メートルで、その上に銅製の観音像が立つ。

　昭和三十年代、弁天池のほとんどは埋め立てられてしまったが数年前、地元の有志によってわずかに残っていた池が整備された。
目黒区の造池業「目黒錦鯉センター」代表、小杉衛さん（６９）が無償で修理を請け負った。
小杉さんは「地元の心意気を粋に感じた」と言い、三年前から自らが率いる目黒の囃子（はやし）保存会を連れて法要に参加している。

　地元七町会が主催した、この日の法要では、吉原に近く身寄りのない遊女の遺体が葬られた浄閑寺（荒川区南千住）の住職の読経に続き、保存会が囃子や子守歌を披露。
鎮魂をこめて池に金色のニシキゴイを放流した。

　池がまだ広かったころの風景を記憶する京町一丁目町会長の片桐桂視（けいし）さん（８４）は「中学生当時、池の前に住んでいました。
その姿が消え、あの震災を知る人は地元でも今、ほとんどいない。たとえ小規模でも、町会主催のこの法要を吉原の歴史の一つとして、これからも伝えていってほしい」と話した。

吉原観音像（右上）が見守る中、今年も町会主催の法要がおごそかに行われた＝台東区で
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20150902/images/PK2015090202100068_size0.jpg

【東京】関東大震災から９２年 遊女の悲劇忘れない 台東区の吉原観音で法要

【東京】関東大震災から９２年　遊女の悲劇忘れない　台東区の吉原観音で法要