【動物行動学】チンパンジーの知能、半分は遺伝、米研究センター [2014/07/11]

おんさ ★＠＼(^o^)／

チンパンジーの知能、半分は遺伝 July 11, 2014
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140711005

(本文)
　チンパンジーなどの大型類人猿は、高い知能を持つことで知られる。言葉を覚え、物を使って遊び、仲間の死
を悼む様子を見せることさえある。しかし人間の場合とちょうど同じように、認知能力は個体によって異なる。

　今回チンパンジーの認知能力に関する過去最大規模の研究が実施され、このような個体差は少なからず遺伝的
性質に起因することが報告された。

　米ジョージア州アトランタにあるヤーキス国立霊長類研究センターの霊長類学者ウィリアム・ホプキンス（W
illiam Hopkins）氏と共同研究者らによると、チンパンジーの知能の変異は、その約半分が遺伝子で決まってい
て、残りの半分が環境要因だという。

　動物の学習に関する研究はこれまで、ほとんど環境の寄与のみに焦点が当てられてきた。20世紀中はほとんど、
科学者は動物がロボットのようなもので、その行動は報酬と罰のような環境刺激に基づいて予測可能なものだと
考えていた。動物は受動的な機械ではなく、むしろ賢く能動的にものを考える存在という証拠が増えつつあるが、
今回の新しい研究もそれを強めるものだ。

　これまで行われてきたヒトの研究でも、今回のチンパンジー研究と同様の推定値が得られている。つまり、知
能の約50％は遺伝によるものだと示唆されている。しかしヒトの発達は正規の教育システムなど文化的要因に著
しく影響されるので、氏か育ちかを選り分けるのは難しいことだとホプキンス氏は語る。

　ヒトに最も近い親類の一種であることから、「チンパンジーを研究することによって、この疑問をよりシンプ
ルに考えることができる」と彼は言う。

◆社会を生き抜く能力

　変異のうちどの程度が遺伝によるものかを明らかにするため、ホプキンス氏のチームはチンパンジーの飼育個
体99頭の認知能力を調査した。一連の13種のテストで、どのようにチンパンジーが物質世界に対応するか、音に
反応するか、道具を使うかなど、様々な知能の発現を測定した。

　テストを受けた一群のチンパンジーは、同じ両親を持つ兄弟姉妹から四従兄弟姉妹（よいとこ：4代前が兄弟
姉妹）、五従兄弟姉妹（いついとこ：5代前が兄弟姉妹）まで、家系図上の広い範囲にわたった。そのおかげで
研究者たちは、認知形質のスコアと遺伝的類縁関係がどれだけ一致するのかを計算することができた。

　2つのカテゴリーの課題で、有意な遺伝性が見られた。物理的な位置を覚えるなど空間認知能力に関わるもの
と、人の注意を引くなど社会的認知能力を要するものだ。中には非常に賢くて、キスの音を出したり手を叩いた
りして実験者の気を引くチンパンジーもいたとホプキンス氏は述べている。「これは本当に知能の高さを表す尺
度で、革新的な行動だ」。

　この2タイプの課題の成績は、性別や、実母に育てられたか人間に育てられたかの違いとは関連が見られなか
った。

　今回の発見は、いわゆる社会脳仮説、つまり人間の知能はわれわれの祖先が大きく複雑な集団の中で人間関係
をうまくこなすのに役立ったため進化したとする仮説を支持するものだとホプキンス氏は語る。

　研究で空間認知能力が遺伝的であることが明らかになったのも道理にかなった話だと指摘するのはスコットラ
ンド、セント・アンドリューズ大学の比較心理学者ジョゼップ・コール（Josep Call）氏だ。今回の研究には関
わっていない。「空間について考えることは、多くの動物にとって極めて重要だ。これは進化的にも古くから見
られる」能力だと彼は述べている。

　今回の研究結果は7月10日、「Current Biology」誌に掲載された。

Photograph by Ian Nichols / National Geographic Creative