【フィリピン】フィリピン人の豆腐職人が日本の木綿豆腐をつくり、貧困層家庭の栄養改善に貢献[09/20]

虎跳 ★

フィリピン人の豆腐職人が日本の木綿豆腐をつくり、貧困層家庭の栄養改善に貢献

　ルソン地方リサール州モンタルバン町に、貧困層の栄養改善を目指し、日本の伝統食品「木綿豆腐」をつくるフィリピン人の豆腐職人がいる。
栄養価の高い豆腐づくりを通じて地域貢献する職人、クリストファー・パアスさん(38)はこのほど、同町で取材に応じ、「自分がつくった豆腐が『おいしい』と言われた時が一番うれしい」と、出来たての豆腐を手に笑顔を見せた。
　パアスさんが豆腐づくりを始めたのは２０１３年。同町で貧困層を支援するカトリック系組織「聖マグダレナ・ソフィア基金（ＳＭＳＦ）」が「豆腐・豆乳・栄養プログラム」を開始するに当たり、
職人気質（かたぎ）を持ちながら誠意を持って豆腐づくりに打ち込める人材を探していた。
　パアスさんは当時、勤めていた会社が倒産し無職だった。「早く再就職したい」との思いもあり、思い切って豆腐づくりの世界に飛び込んだという。
　ＳＭＳＦの有田由佳シスターは「経済的に苦しい家庭が脂肪分の多い豚肉やジャンクフードを食べていることが長年気になっていた」と豆腐プロジェクトを始めた当初を振り返る。
一から豆腐づくりを学ぶパアスさんに「フィリピン一の豆腐職人になれ」と励ましてきたという。
　完全な素人状態のパアスさんに豆腐づくりの基本を教えたのは、一般社団法人日本豆腐機器連合会の川西聡一郎会長(60)。大正時代から１００年以上続く豆腐関連企業の経営者でもある川西会長は「豆腐づくりで重要なのは職人の気持ち」と話す。
川西会長は「熱意があり仕事がはじめから丁寧だった」とパアスさんの人柄を高く評価している。
　パアスさんの豆腐作業所は、首都圏中心部から車で約１時間半ほど離れた場所にある。ＳＭＳＦが運営する「みこころの家幼稚園」の一角にあり、ステンレス製の豆腐製造器はいつも清潔な状態に保たれている。作業所に近づくと、おいしそうな大豆の香りがする。
　パアスさんの木綿豆腐はケソン市の日本食料理店、健康志向の高い外国人などにも好評。３日間で最大約１００丁の注文が入ることも。
近所の住民には貧困世帯が多いため、１丁30ペソで販売、ケソン市には45ペソ（器付き）で配達販売している。「みこころの家幼稚園」の園児には、おから入りのクッキーを給食で出している。
　週３日を豆腐製造に当て製造翌日に配達、作った豆腐を売り切る販売スタイル。「豆腐は鮮度が命。味は落としたくない」と職人気質のパアスさん。首都圏内に作業場を移転すれば、配達は楽になる。
しかし、モンタルバン町の良質な水が豆腐の味の決め手になっているため、移転は考えていないという。
　「より多くの人に、自分が作った木綿豆腐を提供したい」という思いがある一方、パアスさんは「お客さんの笑顔を見たいので配達も自分でやる」と譲れないこだわりが多く、本格的な販売拡大にはまだ課題もある。
　現在つくっている豆腐は、カルシウムを凝固剤として使っている。海水からも取れる塩化マグネシウムを主成分とする伝統的な「にがり」を使うには、まだ修行が足りないという。
パアスさんは「にがりを使うと、豆腐が瞬時に固まってしまう。いつか、にがりを使いこなしたい」と、はにかんだ。
　「豆腐職人としての夢は」と問うと、パアスさんは一瞬考えた後、「根気よく修行して、いつか川西さんのように『本物の豆腐』の味を出したい」と満面の笑みで答えた。

まにら新聞
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