閉館する「大江戸温泉物語」が、お台場の“オタク文化”に果たした「大きな役割」 [鳥獣戯画★]

鳥獣戯画 ★

現代手ビジネス9/5
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86947

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　お台場とオタクとの関わりで最も有名なのは、東京ビッグサイトで毎年夏と冬に開催されている同人誌即売会「コミックマーケット」だろう。

　ここ数年は東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い中止になっているが、それまでは東京ビッグサイトが開業した1996年から、定期開催されている。オタクたちにとっての一大イベントであり、開催期間中は日本全国からオタクが集って来てお台場エリア全体が賑わう。

　コミックマーケット以外にも東京ビッグサイトでは、複数の同人誌即売会や、アナログゲーム、フィギュア・ドール系のイベントが開催されており、オタクたちにとっては重要なイベント会場として機能している。

　コミックマーケットでは、同人誌が頒布されるだけでなく、様々なキャラクターの「コスプレ」も話題になる。実は、お台場ではほかにも数多くのコスプレイベントが開催されている。ここで言うコスプレイベントとは、コスプレイヤーたちがコスチュームに身を包み、自分たちの写真を撮影したり、他のコスプレイヤーと交流をしたりするものだ。

　2015年に筆者がコスプレイヤーたちの間で高い人気を誇るSNSサイト「コスプレイヤーズアーカイブ」を通じて行なった調査によると、お台場にはコスプレイベント会場として使用されたことがある施設が23ヶ所あった。そして、それら会場は一箇所に集中することなくお台場中に点在していたのだった。中でも複合レジャー施設である東京レジャーランドパレットタウン店では、休祝日にはほぼ必ずと言っていいほどコスプレイベントが開催されていた。

　お台場エリアで開催されるコスプレイベントの特徴として、会場に隣接するセンタープロムナード(遊歩道)や水の広場公園といった屋外空間も撮影エリアとしてたびたび使用可能なことが挙げられる。そのため休日にお台場エリアの屋外を歩いていると、高い確率でコスプレイヤーたちの姿を見かけることができた。

　コスプレイヤーにとって、お台場の屋外空間は広大で人通りも少ないため、一般人に邪魔されず自由に写真撮影ができる。また、お台場のどこか独特な風景や雰囲気が、コスプレイヤーたちが再現したい作品の世界観にマッチする点も魅力的であったと思われる。

お台場にある複合商業施設やテーマパークにもオタクたちは集っていた。2012年に誕生したダイバーシティ東京プラザには、オタクたちが集うゲームコーナーや、秋葉原に本店を構えるメイド喫茶(現在は閉店)が存在していた。

　それ以外にもダイバーシティ東京プラザと言えば「機動戦士ガンダム」が有名である。南側の広場には、開業時から実物大のモビルスーツ(アニメ内に登場するロボットの呼称)の像が展示されており、いまだに見物客で大きな賑わいを見せている。

　また館内にもガンダムをテーマにしたエンターテイメント施設のガンダムフロント東京(現在は、ガンプラ総合施設のTHE GUNDAM BASE TOKYOにリニューアルされている)が入る。
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　しかし、お台場にオタク向けの店舗や施設が増えていたのは、筆者の感覚ではおそらく2010年代初頭から中盤にかけてのことである。以降は段々と施設が減少していき、入れ替わる形で近年はオリンピック・パラリンピック関連、あるいはオタク文化とは無縁なインバウンド向け施設が増えていた。

　社会の中でのオタクを巡る位置づけも時代とともに少しずつ変化しており、それもお台場とオタクとの関係に影響を及ぼしていると思われる。近年では、若者の多くが「自らにオタク的な部分がある」と認めるなど、社会の中でオタクやオタク文化がきちんと受け入れられるようになっている(※6)。

　そうした中で、東京都豊島区などはオタク文化を活用した街づくりを進めており、たとえば池袋では定期的に、街中でコスプレをしたまま撮影や買い物が可能なイベントが開催されている。またオタク向けのイベントも東京ビッグサイトだけでなく、幕張メッセなど他のエリアでも頻繁に開催されるようになった。

　オタクたちは自分たちの活動を行うためにわざわざお台場に行く必要がなくなり、よりアクセスの良い場所に出かけるようになったのだ。

　お台場の複合型施設であるパレットタウンが再開発のために2021年12月より順次営業を終了することが数ヶ月前に発表された。大江戸温泉物語、パレットタウンとお台場を代表する施設が続々と無くなっていった先には、おそらく新たなお台場の開発が待っている。しかし、そこにはオタクたちの姿はもうないかもしれない。