【アニメ】フルCGによってよみがえった『聖闘士星矢』 [2014/06/17]

おんさ ★

フルCGによってよみがえった『聖闘士星矢』 2014年6月17日 7時37分
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kihirateruyuki/20140617-00036196/

(本文)
原作者の車田正美が製作総指揮を手がけているにもかかわらず、キャラデザインを一新。車田キャラとも、アニ
メ版で人気を集めた荒木伸吾＆姫野美智のキャラとも違う聖闘士たちが登場。しかもアニメ版では30回以上もの
エピソード数を費やした「聖域十二宮編」を93分に収めている、と聞き、期待と不安を胸に、いざ試写室へ。結
果、不安の部分は杞憂でした。原作者自ら「新世紀の星矢伝説」と語ったこの『聖闘士星矢／LEGEND　of　SAN
CTUARY』は、世界をターゲットにして作られていたのです。

ポイントは３つ。まずはキャラで「脱マンガ」を図ったことでしょう。日本にいると見過ごされがちなことです
が、日本はマンガ文化が特異な発展を遂げた国で、子供の時からマンガに親しんだまま大人に成長した人が多く、
老若男女がマンガを読んでいたりします。しかし、海外（特に欧米）では、マンガ（カートゥーン）はあくまで
も子供のためのもので、大人向けの一般書店にはコミック本の売り場すらなかったりします（コミック専門書店
はあります）。したがって劇場用映画としての海外市場を考えた場合、このマンガ＝子供向けの公式から外れる
必要があるわけです。『星矢』のTVアニメはすでに海外でも人気を博しているので（ただし子供向けの時間帯の
放送がほとんど）、下地は十分。あとは昨今のアメコミの映画化のように、大人の鑑賞にも耐えうるリアルなも
のにして客層を厚くしなければなりません。それが今回のユニバーサルデザインとでも言うべきキャラの変更に
なったのではないでしょうか。どのキャラもマンガ的なデフォルメは回避され、骨格を重視したリアルな仕上が
りになっています。また聖衣のデザインにも手が加えられ、より攻撃的に画面映えするように修正されています。
マスクやプロテクターの装着ギミックなどもフルCGならではでした。

2つ目は上映時間です。割と作家主義的な部分もある日本映画界では2時間を超えるアニメも見かけますが、世界
標準にするとアニメは90分前後というのがほとんど、長くても100分ほどに収められています（もちろん例外も
ありますが…）。黄金聖闘士総登場という人気のエピソードを映画化し、この時間内に刈り込む脚色作業は相当
苦労したろうなぁ、と思うのですが（物語全体の設定の説明もしなきゃいけないし）、逆に物語にテンポを与え、
冒頭からラストまでものすごい勢いで走り抜けていくような爽快感を与えているように感じました。次から次へ
と新たな戦闘シーンが展開するので、いわゆるダレ場がありません。原作を活かしながら、ところどころにオリ
ジナルな部分を配置することで（クライマックスの決戦シーンは原作を大きく離れた映画的な見どころになって
います）、原作を知る観客に先読みをさせないようになっているのですね。おかげで見せ場を削られてしまった
り、中にはまったく出番がなくなってしまったキャラもいますので、その辺りは痛し痒しと言ったところですが…。

3つ目はヒロイン映画としての側面です。もちろん主役は星矢たちで、強大な敵に立ち向かい、やられてもやら
れても不屈の闘志で立ち上がり、おのれの内なる小宇宙（コスモ）を燃え上がらせる、という部分は不滅です。
しかし、今回はアテナ＝城戸沙織にかなり焦点が当てられているのです。なにせ、物語の構造がアテナで始まり
アテナで終わるようになっていますから。彼女の性格設定を原作の毅然としたお嬢様から、普通の16歳の少女に
したのが最大の変更点で、それによって何も知らない少女が自分の宿命を聞かされ、とまどいながら戦闘の渦に
巻き込まれていき、最後には自らの意思で戦いに身を投じる、その成長を描き出すことに成功しているのです。
これも最近の映画の世界的な傾向で、「囚われて王子様の助けを待っているお姫様」というキャラはもはや時代
遅れ、プリンセスも自ら戦う、というのがトレンドなのですね。その意味でもこの映画は世界標準をクリアして
いると言えるのではないでしょうか。また聖域（サンクチュアリ）を原作のギリシアの山中から、異世界的な場
所に移したのも、ファンタジー性を高めていると思いました。