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おい、おまいら!みんなで小説を作るぞP10

1 :名無しの小説家さん:2014/03/02(日) 19:51:19.08 ID:lYnRqkYJ.net
過去の作品

みなさんの力をあわせて小説を作りませんか? P5
http://mimizun.com/log/2ch/koumei/1106136556/

おい、もまいら!創価を愚弄する小説を書け!P8
http://www.logsoku.com/r/koumei/1167670745/

おい、おまいら!みんなで小説を作るぞ!!
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/koumei/1284083783/l50

政教一致@大阪HP
http://www.geocities.jp/seikyou1atoosaka

作品の散逸がいちじるしく、サーバーや作者自身のPCが壊れるなどのアクシデントもあり作者自身の手元にも
一部の作品しか残っていません。ログ速とかどうよとか思うけどこれしかないから仕方ない。

481 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/12(土) 18:49:27.17 ID:eQU4+YgT.net
 彼女が語る話はこうだった。行動隊の話、貪理の事、品川の事件、そして報われない恋と冒険の話。
 英雄にはアル中の彼女がいて、この冒険は結果、殺されるか死刑になるかの二者択一の行動、つまりどちらに転んでも死が待っているし、
自分ももうすぐミサイルを発射してたくさんの人を殺す。だから死刑だ。
 だけど、それは子供たちを救うためだった。他の動機はなかった。お金も勲章もいらなかった。
 結果的に、首相が人質になり国会議事堂が占拠されると言う国難になった。
 そして日没までに来ないと子供を殺すぞ、と言われた時、一人立ち上がったのはチャイナマンだった。
当然の話でチャイナマンは一人しかいなかった。
 都合のいいどこかの誰かはいない。チャイナマンがやるしかない。

482 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/13(日) 07:57:01.61 ID:NqTqqSSZ.net
 「彼は、明日、本妻彼女と映画に行くって言ってるわ。そしてわたしはあさってこの衣装で問題の子供収容所の子供たちのためにプレゼントを積んだリヤカーを引っ張るの、
それがわたしの使命なの」
 やや間があった。
 「あさってはクリスマスで、本妻と彼とのデートをかけた本気のバトルがあるでしょう。ただそれだけの事なの……」
 トナカイはすすり泣いた。
 「ただそれだけの事なの……」彼女は繰り返した。
 「それが私の最後の希望(The last request)なの」
 沈黙。

483 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/13(日) 07:59:03.30 ID:NqTqqSSZ.net
 「わたしたちは奴らを許せない、子供たちには何の罪もない。そう、泣いていられないわ」
 トナカイはハンカチで涙をぬぐった。
 「ああ、手が冷えてる……ほほも……」
 「まあ、それなら、帰りには警視庁にある秘密の女湯に入って行くと良いわ」親切な婦人警官が言った。
彼女の夫も警官で、今日、壮絶な殉職を遂げていたが彼女はそんな事をおくびにも出さなかった。
 秘密の女湯は、昔々婦人警官が交通課にしかいなかった時代の遺物で、
当時は道路も舗装されていなかったりして婦警の仕事は埃を浴びる仕事だと考えられていた。今ほどシャワーは普及していなかった。
 そして、覗きや下着泥棒を企む卑しい輩の前には「鉄ばんば」と言う、
警視庁に住まう謎の正義の妖怪があらわれ「鬼ころし」と言うこれまた謎の制裁を下すと言い伝えられていた。
 「鉄ばんば」が何者なのか、「鬼ころし」がどう言う制裁なのかは謎だった。
ある者は婦人警官の一人が「鉄ばんば」に変身し悪を懲らしめるのだといい、それは婦人警官に代々伝えられる秘伝なのだと言った。
 警察なのだから覗きや下着泥棒がばれたらタダでは済まない。だからここに集う覗きや下着泥棒を企む卑しい輩は逆に選りすぐりのエリートなのだった。
 そしてそれに制裁を下すのが「鉄ばんば」なのだった。

484 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/13(日) 17:12:03.21 ID:NqTqqSSZ.net
 婦人警官たちは、悪党たちの配置を教えてくれた。
 実は、一時半ごろから国会図書館の前に臨時の給水所と喫煙所が設けられた。
 この寒空に喫煙所と言うのもきついが、あちこちで煙草を吸われては困る図書館側が設置したのだった。
実際的には消防署が提供した古い消防の実演に使う缶が三つで水をはった奴。給水所は文字通りで水と熱いお茶の魔法瓶が置いてあった。紙コップが置いてある。これは警視庁が提供した。
 また、このころ、国会図書館の六階の売店に商品の補充が到着した。

485 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/13(日) 17:13:09.46 ID:NqTqqSSZ.net
 この国会図書館の売店と言うのはコンビニがこの世にない時から国会近辺で困った時はここへ行ったら何とかなると言う砂漠のオアシスかと言う伝説の売店であった。
 普通の図書館の売店には絶対に置いていない様な物が置いてあった。余談だが同じフロアにはクリーニング屋もあった。
 とにかく国会図書館は国内すべての図書館を超越しており、国会議員の生活になくてはならない場所で、ないのは風呂と風俗ぐらいなものだ。
 この売店だと売ってる商品はもちろん普通の使い捨てカイロだの牛乳だのいろいろあったが、特殊な物になるとピコピコハンマーとか演歌のCDとかまたさまざまな物があった。
商品とは違うが結婚指輪のカタログまで置いてあった。
 一体誰がピコピコハンマーを買っていくのかは謎だが商品であり売れているようだった。

486 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/14(月) 07:36:00.01 ID:qpGanSmY.net
 唯一、ピコピコハンマーの使い道として考えられるのは国会名物「乱闘」の訓練用だった。
本番は素手か固く丸めた書類でやるのだが、それを練習でやれとなると、本番前に怪我人続出で「戦力」が足りなくなって困るからだった。
 兵は数だとは言われるが、国会議員こそ数なのだ。
 なお、本当の乱闘もピコピコハンマーでやれば怪我人が出なくて済む物と考えられるが、この簡単な発明はどこの政党も採用していない。
 演歌のCDはそんな殺伐とした雰囲気の議員の先生が心をいやすために使うのではないかと考えられる。
 心の絆創膏だ。ちなみに国会図書館内はCDプレーヤーなど持ちこむ事自体禁止されている。
 結婚指輪は謎としか言いようがなかった。国会議員は急に結婚することが多いのか? 出来ちゃった婚対策か何かなのか? 
普通の国会図書館の利用者が唐突にここで結婚を決意するなんて事は考えられなかった。
 どこかの大学の生協が本になったが、ここの売店が本になったら十倍は売れる事は確実だ。

487 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/14(月) 07:37:38.47 ID:qpGanSmY.net
(ついでに書くと売店のおばちゃんらは普通の人で、指輪マニアとは見えなかった。ピコピコハンマーを溺愛しているとも思えなかった。
演歌は好きかも知れなかったが、初対面のおばちゃんにあなたは演歌が好きなのかと質問する事は出来なかった。そんな事をして、
この関西弁の中高年の男は頭がおかしく(それは当たっているのかも知れないが)初対面で熟女ナンパをしてきた不審人物と思われて警察に通報されマークされる事は出来なかった。逮捕されたら書けなくなるからだ。)
 (今、全ての原稿を書き上げてこの項を読み返している。
 ピコピコハンマーや演歌のCDを見て、初対面の売店のおばちゃんに「ピコピコハンマーをナニに使うんですか」または「あなたは演歌が好きなのか」と思わず熟女ナンパをしてしまい、
そのまま大いに盛り上がって近くにあるこの作品で何回も出た全国町村会館に行ってしまいダブルの部屋に泊ってしまって、そして指輪のカタログというつながりは考えられないだろうか、
それだと全ての事がつじつまが合って来るような気がしてくる。おそるべし、国会図書館の売店)

488 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/14(月) 07:39:35.54 ID:qpGanSmY.net
 商品搬入により一気に国会議事堂周辺の生華学会は砂糖に群がる蟻のように国会図書館に集まって来た。武器は置いてきた。
 そうした人々はほとんどが人質特に子供の処刑には賛成ではなかった。
 警察はそんなにスパイした訳ではないのだったが、非武装の警官数名はそこらで煙草を吸っていて、それに彼らは自主的にちくって来た。
 それによると、子供らは憲政記念館、首相らは衆議院分館だと言う事だった。
 見張りは少数で、子供の見張りはやる気はなく銃で脅されればすぐに釈放するだろうと言う事だった。
 ただ、憲政記念館は今は上の階に戦闘部隊がいて要塞化していてうかつには近づけない。唯一の弱点と言うかアクセスできる道は国会議事堂正門側からだった。国会図書館側からは中立地帯なのでチャイナマンが行く事は出来ない。
 また、これは武器ではないが国会記者会館にはNHKのテレビ中継車が停まっている。奴らの、学会の放送マシンと化してしまったNHKは、考えればテレビも武器だ。
奴らは放送で次々生華学会に都合のいいでたらめを流そうと思えば流せたはずだ。注意しなければならないと婦警たちは言った。
 国会議事堂正門前の兵は百名、装甲車一台。これは多いのか少ないのかトナカイには分からないがついさっき装甲車2台兵60名を蹴散らしたばかりだし、
こちらには今度はミサイルがある。
 「行けると思うわ」トナカイは言った。
 「女子トイレでパーティなんて何年ぶりかしら」と一番年長の婦警がほほ笑んだ。

489 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/14(月) 17:41:14.75 ID:qpGanSmY.net
 警視庁前に戻ると、チャイナマンは倉田警視と何かをしゃべっていた。
 「おまたせ」
 「ああ、今話してたんだけど、人質は……」
 「憲政記念館でしょ、婦人警官の人に教えてもらったわ、それで時間かかったの、ごめんなさい」
 「ああ、そうだったのか」
 「それで、チャイナマン……」倉田が言う。
 「正面から行くのが一番早いと思われます……」
 「危険もあるが?」
 「ミサイルを用意してる」
 「あの、見せてもらってもいいですか……」先ほどの女子トイレにいた中で一番若かった婦人警官がトナカイに言った。
 眼鏡をかけていて髪の毛はセミロングだ。今は乱れているがきちんとしている暇はなかっただろう。丸顔でちょっと美人だ。
 「ミサイルを見たいの?」とトナカイ。
 「はい……」
 婦人警官は桜庭萌未と言い、武器には詳しいと自己紹介した。

490 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/15(火) 07:57:17.13 ID:E1AXjpL4.net
 「チャイナマン、ミサイルを見てみたいってこの子が」
 「ああいいよ」
 婦人警官は目を輝かせて軽トラの荷台に乗った。
 「わあ、メデューサミサイルシステムじゃないですか。こんなものをどこで?」
 「誰からもらったかは秘密だが、そこは謎の中国人から買ったって言ってたよ」
 「え? もしかしてチャン・リーじゃ?」
 「そいつを知ってるのか?」これには涙田もびっくりした。
 「知ってるも何も、国際手配中の有名人です。兵器密売界の立志伝中の人でファンクラブもあるんです」と婦人警官。
 「もしかしてそのファンクラブの会員なんじゃないだろうな?」と倉田。
 「ぎくっ」っと婦人警官。
 「図星か!」
 「兵器密売界ってなんだよ」
 「現職警官がそんなファンクラブに入っていいのか」
 みな、突っ込んだ。

491 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/15(火) 07:58:47.08 ID:E1AXjpL4.net
 「あの、発射係やらせてもらえないでしょうか?」と、めげずに萌未は言った。
 「うーん」
 涙田は素早く考えた。
 問題なのは最初の一発だった。こいつは装甲車がターゲットだがこれだけは軽トラック対装甲車の直接対決になってしまう。
それをどうにかしようとしたら機動力を生かすしかない。
 まずいことに、ミサイルの発射制御はケーブルでつながれたリモコンだった。
 戦場ではいろんな電波が飛んでいるだろうし、同じ型のミサイル発射機が複数、同じ陣地にあると言う構成も考えられる。ぽちっと発射ボタンを押したら隣のミサイル発射機からミサイルが飛んだのでは危険すぎる。ケーブル式が一番確実だ。
 しかし、ケーブルはかなり長いものの軽トラの運転席までは届かなかった。
 「これは改善するべきですね」とのんきに萌未は言った。確かに改善はするべきだが今は仕方がない。
 「最初の発射ポチだけやるか?」と涙田。
 「えっ! いいんですか」
 「作戦だが、対戦車ミサイルをここでセットして待機、俺が照準手として前で照準する。
で、OKってなったら無線で言うからトナカイが軽トラを、国会前の交差点まで出す。
 そこからだと遠くて、奴らからすればまるでミサイルを積んでるなんて分からないだろうが見きれている事は間違いない。
そして絶対に装甲車の機関砲の射程内だ。
 でも、君は勇気を持って、今まで殉職した警官の仇を取ると思ってぽちっと発射ボタンを押す。
ミサイルは高温の炎を噴射しながら飛んでいく。火炎に注意しろ」
 「おい、ちょっと待ってくれ」倉田は言って来た。チャイナマン=涙田は彼を横に呼んだ。
 「ここはマスコミ対策も必要なんですよ、警視」
 「なんだと?」
 「警視庁では婦人警官も勇敢に戦っている、みたいな」
 「うーん……」と倉田。
 「これが柔道の得意ないかつい刑事十名では、理解は得られても共感は得られませんよ。
 ここであの装甲車をつぶせるかどうかに後の展開がかかってくる。
 トナカイがトラックをとめてから荷台に上がるまでの時間が無防備すぎます。
 一瞬で決めなければ。
 その一発さえ決めれば後はトナカイでやれます。もちろん、兵器に詳しい彼女がいてくれた方がトラぶった時に心強いけれど」

492 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/15(火) 08:01:12.43 ID:E1AXjpL4.net
 「それはそうだ」倉田は言葉的にはそう言ったがやや渋い顔をしたままであった。
 「警視、見方を変えれば、これはあなたの出世にも影響してきますよ、あの子がぽちっと発射ボタンを押しただけで、
ただそれだけであたかも全手柄が倉田警視のものだったかのようにできますよ。
 あなたが命令してやらせたかのようにふるまえばいいんです。
 燃え上がる装甲車、当然私は前の方にはいますが身を隠していますから誰も見ていないでしょう。
 装甲車をやったら、何人か部下を連れて軽トラックの所まで来てください」
 「危険はないか?」
 「機関砲はもうありませんから大丈夫です。M16は届きますよ、もちろん届きます。しかし敵はそれどころじゃないでしょう。
 トナカイはその頃には運転席から降りて対人ミサイルの用意に取り掛かっているでしょう。
そうだ、予備のウージーがあるからそれをあの子に預けて周囲を警戒するようなそぶりをしてもらいましょう」
 「そぶりか、それはいいな、まあ、実際に来たら我々が始末するがな、SATの狙撃要員を連れて行く、私も連れて行く皆も拳銃は持っている」
 「それは写真にとらないで、あの子がウージーを軽トラの上で構えているカットを、そう背後にさりげなくミサイルが入っている奴を撮るんです。さも戦ってます風の奴をね。
 あなたが銃を構えているみたいな奴は、失礼かもしれんが臭いと言われるでしょう。
 しかし制服の婦人警官がウージーを構えている奴は、一発も撃ってなくても戦ってる的なイメージを出せますよ」涙田のアドバイスはかなり倉田の急所を突いていた。

493 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/15(火) 21:58:13.87 ID:E1AXjpL4.net
 「うーん」と倉田、かなり心は動いている。
 「それで、それを指揮したのが自分だったと後で言えばいいんです。
 大筋嘘じゃない。戦ってるも嘘じゃないでしょう。
 発射ボタンを押すだけでも危険な場所まで進出してるんだし戦ってるのは真実だ。
 指揮しているもあながち嘘じゃない。こうやって話をしているのを傍が見たら
やはり年恰好からも何からみても警察の対策本部長の指揮を受けるチャイナマンの構図ですよ。現に情報も貰ってる」
 「うーん」
 「ここで男になって下さいよ。死んだ部下が浮かばれませんよ、それで、軽トラの所でひと固まりで倉田警視らはいて下さい。
我々は対人ミサイルとグレネードで正門付近の歩兵をたたきます」
 「グレネード?」
 涙田は例のM16スナイパーカスタムを見せた。萌未はさっそく触りたがった。
 「うわ、なにこれ、重い? M16なのに……でもM203がついてるからこんなものかしら、照準は合わせてあるんですか」
 「いや、さっき受け取ったばっかりなんだ」
 「じゃ、きっとあさっての方向に弾が飛んでいきますよ。実射レポートにそう言う記事がありました。M203だけ持って行ったらどうですか」
 「いや、そう言う訳には……実は、メインの銃はG3A1なんだが、弾が残り少ないんだ」
 「うわー、50連発ドラムマガジンだ。珍しい!」
 「まあなあ、桜庭さんは発射ぽちしたらこれを持って周囲を警戒して」
 「あっ、ウージーだ」
 「敵から奪ったんだ」
 「すごい! 家宝にします」彼女は交換に手錠をくれた。

494 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/16(水) 07:04:31.98 ID:maJhMVeY.net
 彼女がウージーを持つと何もしていないのにかっこよかった。警察はみなそれを撮影した。
 また、警察は皆、敵から奪ったと言うウージーを見たり触ったりしたがった。
 特に機動隊から来た前線の警官はこれは何回も見たし、これは奪える可能性が高いから使用法を教えてくれないかと言いだした。
 これには実は裏の事情があった。
 警察もこの時点で、実際に奪ったり投降した敵側から押収したウージーやM16A1を相当数持っていた。
機動隊から来た警官らはこうした武器、特にウージー用の9ミリ拳銃弾を警視庁に受領しに来ていた人たちだった。
 警視庁庁舎には大量の9ミリ拳銃弾があった。これらはHKMP5シリーズ用だったがウージーにも使えた。(M16の弾薬はなく、使用はしないと決められた)
 また、倉田は以前の品川の事件で押収したウージーも証拠品だが使うと決定したのだった。
所詮これらは証拠品と言っても出所を突きとめる役にも犯人を割り出すという役にも立たない物だった。
 そこでチャイナマンはもう一丁(山の中で一丁、貪理で一丁奪ったので二丁持っている)ウージーを出し、即席のウージーの使い方講座をする。
 銃本体が少ない事と、出来るだけ多くの警官が知っておいた方がいいから、
三回連続同じ事を説明する。輪になって、聞くだけでもいいから聞いてほしいとチャイナマンは言った。
 後に、この説明会(?)は伝説になって行く。

495 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/16(水) 07:05:21.39 ID:maJhMVeY.net
 警察が使っているHKMP5シリーズとは使い方は違う。安全装置兼セレクターは銃を構えた状態で切り換えることが出来ます。これは実戦的です。
 また、チャイナマンは、ウージーは連射するとあっという間に弾が尽きてしまうし、銃弾はあさっての方向に行くと強調した。
 単発で、狙い撃ちする方が警察行動には向いていますよ。あえて連射を封印して戦った方が警察の慣れている戦い方が出来ますよ。
皆さんはマシンガン式の連射に慣れている軍隊じゃないんですから。
 貪理の時もそうでした、十対一でも勝てたのは、相手が素人でアルコールとドラッグでふらふらだったからでもあるが、単発射撃を選択して狙ったからなんです。
 しっかり狙うんです。構えるだけでも威嚇になります。
 いつでも予備の弾倉に手が届くようにしておいた方がいい。残りの弾が何発かなんて、これから初めてウージーで戦うのにそんなのわかるわけない。
 切れたっと思った次の瞬間にマガジンを交換する。それぐらいの気持ちを持つ方が逆に実戦的です。

496 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/16(水) 19:38:39.77 ID:maJhMVeY.net
 みんなでウージーを回して、危険のない方向に狙いをつけたり、セレクターを操作したり、特徴のあるストックを伸ばしたり縮めたりした。
 ただ、チャイナマンは行動中は隠し持つ必要は(警察だから)ないのでストックは展張したままにしといた方がいいと助言した。全てが実戦志向だった。
 それから婦人警官が、何人かでウージーでポーズを取り写真を撮った。
 今時の流行で、ツイッタ―にアップするとか言うのだった。それで何人か男性警官が続いてウージーを手に写真を撮った。子供に見せたいとか言う定年間際の人とか、色々だった。
 これらの写真がネットに一挙にアップされるのはタイミングとしては戦闘が激しくなる前なのだがそれだけを見ている一般の市民や、
敵側になる学会にしてみると警察側に大量にウージーが入ったかのような印象しか受けないし(写真の銃は実際はたったの二丁で、しかも本当に警察の手に渡ったのはその内の萌未が持った一丁なのだが)、
記事が全てチャイナマンからレクチャーを受けたとかそういう記事であったのであった。戦闘指導を受けていると言う記事だ。
 意図してはいなかったが、情報戦でチャイナマンは学会に二回目の攻撃を入れる結果になった。それも早い段階でだった。自民党跡地前交戦からまだ一時間ちょっとだった。

497 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/16(水) 19:40:54.70 ID:maJhMVeY.net
 それで、全くプレゼントがもらえる訳でも何でもないのだが
チャイナマンがサンタの格好をしている事もあって早いクリスマスが来たように警視庁は明るい空気になった。
 今朝から押されまくりで死傷者続出だった警察に超強力な助っ人が始めて来たのは事実だった。
ミサイルなんてそこらから来る事はない。
 明るい空気の中、チャイナマンは警視庁から滑り出るように出て行った。
 「よし、みんな、奴らにチャイナマンが来て、攻撃に出ると言うネタをつかませるんだ。
さっき自民党本部跡で交戦があったことから、もう一回そこに行くかのように匂わせながらな」倉田が言う。
 「はい」
 「それから、各方面にこれからチャイナマンが攻撃をかけると連絡を入れるんだ。それこそみんなが元気を出せるようにな」
 「おう!」

498 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/17(木) 06:54:28.77 ID:FEef78Jx.net
 チャイナマンは慎重に警視庁前から国土交通省ビル前に進み、一度ビル中に入った。
 交差点に突っ立っていたのでは危険であり、まずはここから国会前の庭園に向かってダッシュ、が正解だが様子をよく見たほうがいい。
 市街戦では、交差点が勝負になることが多い。
 この場合だと庭園は緑が茂っていて安全そうに見えるが、そしてSATの先行偵察要員がいると教えられているが観察は欠かせないだろう。
 国土交通省ビルの中は空家のように空で、静かだった。国土交通省の職員は全員避難している。
 涙田はお面を慎重に取ってスカウターを装着した。ふと見ると自動販売機があったのでそこにあった「北方領土茶」を買う。
 こんなジュース(茶)を中央官庁が売ってていいのかと思うが、ムネオハウスが実在するぐらいだからいいのだろう。
 と、携帯が鳴った。戦闘行動中は携帯の電源を切るのは常識であり、彼はうかつにもそれを怠っていたのだった。
 出ると行動隊の大幹部、下田だった。

499 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/17(木) 19:36:15.99 ID:FEef78Jx.net
 「涙田、おまえやらかしたらしいな。ネットで見たぞ」
 「はっ」
 「大村からも聞いた。どうするつもりだ」
 「国会議事堂に行き、人質を救出するつもりです。
 まずは子供からです。今、国会の正門に向かう所です」
 「正面からか? わが行動隊の先頭になるな」
 「は? と言うと?」
 「実は、行動隊はもうじき生華学会に総攻撃をかける。
 これ以上黙って見ている訳にはいかないと決まった。そうなれば奴らは総崩れになるだろう」
 「もっと早ければ良かったのに」
 「それは出来なかった。これは大きな事だ。
 例えば大村の事を考えてみろ。奴に命を捨てて戦えと命令するのは簡単だが、奴には会社も家族もいる。その責任は誰が取る? 
 たとえは悪いかもしれんが戦争中の特攻隊だってそうだっただろう。行け行けと言ってた連中で本当に責任を取ったのは一部だけだ。多くはお茶を濁していた。
 我々行動隊はそうではない。動くとなったら全員が動く。だから本当はお前のしている事は重大な規律違反だ」
 「そんな……」
 「仕方ない、俺もあの放送を見ていた。チャイナマン、健闘を祈る」

500 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/17(木) 19:37:12.76 ID:FEef78Jx.net
 急がなければならなかった。
 総攻撃を行動隊が加えるとなれば、学会がやけになって日没前でも人質を処分するかもしれなかった。
 反面、総攻撃にまぎれて人質奪還作戦を行えるというメリットもある。
 何もなければ全兵力をチャイナマンに向けると言う事も可能だ。
 涙田は慎重に国会議事堂を見た。
 そこはもはや悪党どもの巣窟と化してしまっていた。憲政記念館はここからでは見えない。
 メデューサのシステムを起動すると、そのままダッシュで交差点を突っ切り国会前庭園(南)の緑の中に飛び込む。
赤いサンタ服は思いっきり目立ったはずだが射撃はなかった。

501 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/17(木) 19:40:02.07 ID:FEef78Jx.net
 国会正門前。
 装甲車の中で鈴木は交代に来た事を後悔していた。
 ここは危険だと言う鰻原の話は本当だった。
 彼は交代のまた交代で来ているのだが、もう更なる交代の北田と言う男がトイレに行くと言ったまま帰って来ない。
 装甲車の中はいいが、外は12月22日の曇りの天候。歩兵はつらいだろうと自分を慰める。
 鰻原に彼女がいたのは驚きだった。
あんなSPTレイズナーのゴステロ(殺人が大好きなアニメのキャラクター)みたいな奴にあんな美人の看護婦がくっつくなんて。
 仏教では因果という考え方があるが、殺人や破壊工作が大好きだと美人の恋人が出来ると言うのは矛盾している。
 ちらっと赤い人影が見えたような気がして彼は目をこらした。
 気のせいだったようだ。警察の部隊が目の前の緑地に潜んでいるのは分かっていて、時々交代や増援が走っていたが射撃できないでいた。
 チャイナマンが来て彼を殺せば十億らしいが、それよりも命が欲しい。
情報によれば彼は警視庁に入ったらしい。警察が彼を先頭に立て押し込んでくればこっちはひとたまりもない。
 奴一人でも駄目なのにその後にSATと機動隊が続いたらもう終わりだろう。

502 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/18(金) 07:36:41.84 ID:sgWtLZTp.net
 涙田は目標の池に着いた。そこに先行していたSATの偵察員が二人いた。
 彼らの案内で偵察ポイント4号に移動する。そこからは止まっている装甲車が見え、向こうからはまずこちらは見えないだろう。
 「こちらチャイナマン、位置についた。攻撃開始せよ」
 「トナカイ了解」
 涙田は偵察員にこんな事もあろうかと買っておいた暖かい北方領土茶を差し入れした。装甲車を「見る」。

503 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/18(金) 07:37:12.29 ID:sgWtLZTp.net
 さおりは警視庁前から軽トラックを出した。
 警察庁舎、国土交通省、そして国会前の交差点の真ん中に来た。
 急ブレーキ。
 萌未は発射ボタンをぽちっとした。
 シュパッ
 気持ちのいい音と共にミサイルは一直線に装甲車に飛んでいく。ふらついたりしない。矢のようだった。
 ……気持ちいい、これでみんなの仇をうったわ
 萌未は爆発をしっかり見ようとした。

504 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/18(金) 07:38:02.63 ID:sgWtLZTp.net
 鈴木は軽トラが停まったのは見たが、それが何なのか分からなかった。
 これだけ離れていると、双眼鏡を使わないと荷台に婦人警官がいる事なんて分からない。
 軽トラ自体、ここからでは点のようで(国会正門前と国会前は200メートル以上離れている)
かろうじて車種が軽トラであろうと分かる程度なのだ。さっきの人影だって赤いと言う事しか分からなかった。
 彼はミサイルも見なかった。彼が最後に見たのは時計で、もうじき日没だと思った。

505 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/18(金) 20:11:46.64 ID:sgWtLZTp.net
 「正門前、攻撃を受けた!」志村は無線に叫んだ。
 「どこからだ、周りの緑地からかそれとも……」安藤が返す。
 「分からない、応戦中、応戦中!」
 「分からないのに応戦しているのか? 撃つのをやめさせろ、弾丸がもう補給できないんだ」
 「そ、そんなこと言ったって……」
 それが正門守備隊指揮官志村の最後の言葉だった。チャイナマンがM203でグレネードを撃ちこんできたからだった。
 グレネードは歩兵隊の真ん中で爆発、こうなると盾などまったく役に立たなかった。

506 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/19(土) 06:18:29.68 ID:sqRLKNJw.net
 さおりは対人ミサイルを萌未と協力してセットした。
 「トナカイよりチャイナマン、対人ミサイルセット良し」
 「発射」
 「了解、発射するわ、萌未、下がって」
 シュパッ
 ミサイルは右往左往する歩兵隊の左翼で勢いよく爆発。人間の体が特撮みたいに宙に飛ぶのが見えたような気がしたが、これだけ距離があるとそれは肉眼では見えない。
 「あの、考えたんですけど……」と萌未。
 「何?」
 「私が三号で、三つ巴で激しく彼を奪い合うと言うのはどうでしょう?」
 さおりはミサイルを危うく取り落としそうになったが、こらえた。
 「それは……」
 「だめでしょうか?」
 「それはいいわねと言う訳ないでしょう」
 「でも、三人だとぎりぎり戦隊ができます。本部長には引き続き本部長をやってもらって……」
 「敵はどうするの?」
 「海底王国とか……」
 「そう言うのはね、実際にいそうな設定にしないとだめなのよ。例えば大阪なら犬鳴山から父鬼あたりを縄張りにしている山賊とか」(作者注、山賊はいないが暴走族はいる)
 「そうかあ……」

507 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/19(土) 06:19:59.87 ID:sqRLKNJw.net
 倉田が特号装甲車で来た。倉田ら本部員は下車してトラックの方に来た。
 「あ、本部長もポチっとしませんか」
 「え、いいのか?」
 「それはもう、当然、あいつらやっつけて下さい」とミサイルをセットしながらさおりは言った。チャイナマンに説明すると彼も賛成した。
 「よーし、じゃ」
 「あ、写真撮らないと、発射する所を。そして本部長自らがミサイルを撃ってるとか、警察無線で流せってチャイナマンは言ってます」
 「え?」
 「それで、警察はすごい力が出る筈だそうです」
 「そ、そうか……」

508 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/19(土) 06:22:23.77 ID:sqRLKNJw.net
 ミサイルは今度は右翼で爆発した。
 歩兵隊はどこからミサイルが来るのかわからなかった。
 ミサイルが目に見えるように分かりやすく飛んでくるのはアニメの中だけであり、実際にはロケットモーターの力で飛んでくるのだから撃たれる側から発見するには軽トラックを注視していて発射を見て、
それからミサイルが次の瞬間自分たちの陣地に命中するのを見て、「あのトラックが撃っている」と叫ぶ必要があった。(イラクの戦例でも飛んでくる対戦車ミサイルを見た米兵はほとんどいないと言う報告が上がっている)
 当然、そんなことができる奴なんか一人もいなかった。無茶苦茶にM16A1を乱射しながら(大半が空を撃った)、右往左往する。
多少正気なものは負傷者を引きずって正門内に逃げようとした。そこへグレネードがシャワーのように降ってくる。
 涙田は訓練通りに正確に連続で撃ち込んで行った。これもどこから撃ってくるのか歩兵らには全く分からない。
 ミサイルも続けざまに来た。倉田に限らず本部員は面白がって次々ぽちっとしたので、わずかに生き残った兵らの最後の行動は阿鼻叫喚の地獄から這って逃げることだった。
 少数が憲政記念館まで這い進んで死んだ。
 もう、立っている兵はいなかった。装甲車は燃え上がっていた。
 「チャイナマンよりトナカイへ、歩兵隊全滅、これより正門へ向かう。中へは入らないが、確認はする」
 「了解」
 涙田は道路に出た。M16スナイパーカスタムを構え、予備のG3A1を肩にそろそろと前進する。彼にも軽トラックにも一発も弾は飛んでこなかった。完全勝利だ。
 しかし、まさかと思うが死んだふりの敵がいるかもしれない。そう言う奴が一番危ない。

509 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/19(土) 18:57:00.78 ID:sqRLKNJw.net
 正門前は地獄のようだった。装甲車は燃えていたが下火になっていた。
 生き残っている兵はいない。死体はかなり損傷していた。
 「損傷していた」は「はらわたが飛び出したり、手足がちぎれたりしていて首がボールか何かのように転がっている状態、正視に堪えない」をやさしく表現したものだ。
 小説家はよくそう言うやさしい表現のほうを選択する。別にそうではないのに残忍な奴だとか読者に言われたくないからだ。
 それはともかく転がっているM16A1の中のかなりの数は使えそうな感じで、一瞬涙田はスナイパーカスタムと換えようかと思った。
 ただ、この先状況がどう転ぶか分からない。狙撃がいるのか、M203グレネードがいるのか、わからなかった。
 それにM16は爆発をくらっているから、まあ大丈夫だろうとは思うものの用心したほうがいい。それより転がっている死体は全部、
M16の弾を身につけているのだからここに戻れば弾は補給できる。それぐらいに考えておけばいい。
 正門は開いていた。トラロープと言うのか、工事現場なんかで使うロープが一本張り渡してあるだけだ。国会議事堂の前は誰もいない。
 これだけ前で爆発しているのだから逆に人がいるほうがおかしい。
 閣僚も救出したいが、どちらなのかと言うと子供が優先だった。
 先ほどの打ち合わせで倉田は、悪人は閣僚のほうが人質の値打ちが高いと判断して殺すのを後回しにする可能性が極めて高いと指摘した。
 それに子供を救出すれば残されたカードは閣僚だけなのだから閣僚の安全性が(一時的ではあるものの)高まることも期待できると言った。

510 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/20(日) 07:27:15.47 ID:rn/US6Ee.net
 「チャイナマンよりトナカイへ、国会議事堂正門前はクリア、門は開いている。前庭には誰もいない。しかし、中には入らず、憲政記念館に向かう」
 「了解、チャイナマン。子供を救出後、打ち合わせでは国立国会図書館に脱出することになってたけど、今入った情報だと脱出を希望する兵らが続々国会図書館に向かいつつあるらしいの、
国会図書館の館長は彼らは図書館につくまではまだ武器を持っていて、人質が目の前にいたら気が変わる恐れがあると指摘しているわ」
 「うーむ、身代金とか考える奴もいるかも知れん。国会図書館以外の提案は」
 「そのまま下がって今立っている正門前まで、そこでキープするの。ここから機動隊バスで迎えに行けばすぐよ」
 「了解、チャイナマンは憲政記念館に向かい、人質救出後は国会議事堂正門前まで下がる」
 「準備が整い次第、チャイナマン軽トラは本部装甲車、機動隊バスと国会議事堂正門前まで進出します、気をつけてね」
 「ああ、これから順次状況を送る、もう一台警察無線でこの周波数を拾って桜庭さんにもモニターしてもらって、
桜庭さんは周辺を警戒しながら倉田本部長以下に状況を伝えてもらう役をしてほしい。
 本部が状況を把握していないとこれからの救出作戦は難しいからな」
 「了解、警察無線はすぐ用意できる筈よ」

511 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/20(日) 07:29:31.98 ID:rn/US6Ee.net
 安藤は正門前の守備隊がどうやら全滅したらしいとの情報に頭を抱えた。
 戦闘のセオリーに従えば、こんな時には奪われた拠点は直ちに奪還しなければならなかった。
 ましてや場所は正門なのだ。直ちに対応するべきだった。
 しかし、安藤には即応できるような兵の余裕はなく、仮にあったとしても、またやられるだけという結果がもうやる前から見えていた。
 そうやって、つぎつぎやられていくうちに兵力がなくなってもうおしまいということになるのだ。
 国会議事堂は決して城ではない。防御など考えられていなかった。
 正門が落ちた今、ほかの門は健在であってももう陥落したも同然ということになってしまった。
 安藤は、警備と戦争の違いをいやというほど思い知らされた。
 自分たちは必死で大兵力を投じて警備していたつもりだった。
 しかし、本気で戦争を仕掛けられたらそれは全く意味がなかった。
志村や鈴木らは無駄に死んでいった。兵百、装甲車一台もなんら有効な反撃を行えず散っていった。盾など何の意味もなかった。
 そして、そんな攻撃をかけてくる相手といえば……
 「チャイナマン……」

512 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/20(日) 19:04:57.27 ID:rn/US6Ee.net
 涙田は用心深く前進した。
 スカウターは背中のバックパックに戻しお面をつけている。
 本当はもうお面でなくてもいいような気がしないでもないが、それでも彼はこのお面にこだわりがあった。
 憲政記念館は機関銃を絶え間なく発射する状態だった。しかし、正面の道には数名の歩哨を置いているだけであった。機銃などはない。
 彼らはチャイナマンが近付いてきたというだけで速攻で逃げて行った。やはりお面をつけるというのは正解だったようだ。
 死体があちこちにころがっている。
 涙田には罪の意識はなかった。
 殺らなければ殺されていた。戦場のルールだ。行動隊でいやと言うほど叩き込まれたルールだ。これまでいやと言うほど見て来たルールだ。
 憲政記念館は正面(現在は斜め正面)から見る限り、機銃音がしなければモダンな建物であった。
 前庭には兵がいたらしい痕跡はあったものの現在は無人だ。先ほどの正門前交戦の爆発音はここでも聞こえていた。
逃げたと言うのが真相で、わずかに踏みとどまっていたのが先ほどの逃げた歩哨だろう。
 「憲政記念館へ接近中」

513 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/20(日) 19:06:06.94 ID:rn/US6Ee.net
 「了解、情報によれば人質は一階の議場体験コーナーにいるらしいわ」
 「侵入を試みる」
 さおりは萌未と周辺警戒に戻った。二人ともウージーを手にしている。
 「必殺技って言うのはねえ、そんな簡単な物じゃないと思うのよ」とさおり。
 「しかし、必殺技なしじゃ……」
 「それはそうだけど、チャイナマンローリングサンダ―アタックって言うのはちょっと……
しかも、太田貞子直伝と言う設定は本人の許可も得ていない以上、これから救助するとしたって……」
 「今は何かないんですか?」
 「コンビニの前で酒の立ち飲みをする事らしいわ」
 「アル中?」と萌未。

514 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/20(日) 19:07:18.19 ID:rn/US6Ee.net
 正面玄関も無人だった。ただここも前は兵がいたような形跡はあった。弾薬が若干だがきちんと用意されている。
ウージーの弾倉とM16の弾倉。テーブルに国会議事堂周辺の地図があった。
 涙田は、机の上からワルサーP38を取った。何気ない動作で弾丸がフルに装填されていることを確認する。
ちなみにワルサーはコルト系のグリップの横に着いたボタンではなく、グリップ底部に着いた爪のような部品でマガジンをリリースする。
 兵は武器を捨てているのだから相当あわてて逃げた。そんな感じだ。銃はズボンのベルトに差した。
 「トナカイへ、建物内へ侵入した」チャイナマンは言った。
 「了解」
 「引き続き、議場体験コーナーに向かう」
 無線を切って
 「だから、チャイナマンヘリってだれが操縦するの?」とさおり。
 「それは、えーと……」
 「チャイナマンサブマリンはもっと駄目じゃない」
 「それは、北朝鮮からサンオ級潜水艦を分捕って」
 トナカイ=さおりが振り返ると倉田は警察無線で檄を飛ばしている。
 チャイナマンがもうすぐ子供の人質を解放する。最後のひと踏ん張りだ。
ここで憲政記念館に応援を回されたら全部一からやり直しだ。全警察攻撃にかかれ。

515 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/21(月) 07:11:36.05 ID:i9OJOlZB.net
 安藤は権を呼んだ。権は国会議事堂内のどこかの部屋にいるらしい。声の背後に複数の人が大声で話している声がした。
 「正門前の隊が全滅しました」
 「何だと?」
 「ここは丸裸になってしまいました」
 「こちらは、この非常事態の前にはもう衆議院とか参議院とかはなく国会という単一の会議しかないと言う、そう言う所まで話はまとまっている。
 超憲法の事態だと。
 これから臨時の議長は誰にするかを決める段取りをする所だ。もうちょっとの所だ」
 権の話は当面の危険とは違う方向へ向いていた。
 リーダーとして危険な兆候だった。今目の前の危機が見えていないのだ。
 「し、しかし、そのもうちょっとが持ちません。もうすぐ警察がやってきます。機動隊が突入してくるでしょう。分の単位の話です」
 「何とかならないのか? どこかから兵を回せないか」
 「それは考えましたが、同じ手でやられるだけでしょう。馬淵なら上手い手を考えたかもしれませんが」
 あの二人を失ったのは失敗だったか……権もようやく気がついたが手遅れだった。
 「人質で交渉できないか?」
 「どう? 突入したら殺すぞと言うんですか? もう、すぐに日没ですよ」

516 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/21(月) 07:12:16.01 ID:i9OJOlZB.net
 議場体験コーナーに子供たちと、保母さんたちと、犬田弘忠がいた。
 縛られてはいなかったが、彼らの周囲には指向性仕掛け地雷、クレイモア地雷が多数仕掛けられていた。
 見張っているのは鰻原と敦子だった。
 鰻原はケーブル式の起爆スイッチを持ち、敦子はワルサーとピコピコハンマーと言う奇妙な武装だった。
 小さな子供はワルサーで脅すと言う手段が効かないためピコピコハンマーを使うしかなかった。
 国会図書館の売店はこの非常時でも顔色一つ変えずピコピコハンマーを売った。中東に武器を売る死の商人のようだった。
 おそるべし、国会図書館の売店。

517 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/21(月) 07:30:21.03 ID:i9OJOlZB.net
 「トナカイへ、人質が見えた。
 議会の体験コーナーに座らされている。まわりにクレイモア地雷と言って対人地雷の一種、爆発物なんだが、
爆発すると無数の鉄球が飛び散る(約700個)恐ろしい爆弾が複数仕掛けられている。爆発したら子供たちはひとたまりもないだろう」
 「チャイナマン、慎重に行けと本部長が」
 「了解。見張りは二人だ。一人は親衛隊の装甲車部隊の軍服を着た男、起爆装置らしいコードを握っている。
もう一人は白衣の看護婦、今は女性看護師と言うのか? 手に拳銃とピコピコハンマーを持っている」
 「チャイナマン、ピコピコハンマー?」
 「そうにしか見えない。作戦は、近づいて行ってできれば説得で投降させたい。
 それが人質にとっては一番安全だ。仕方がなければ隙を見て射殺するしかないが、無理やり殺す事はない」
 「了解、こちらでもモニターする。戦況は、南側戦線で機動隊が攻勢を強めているわ、捕獲したウージーが効果を発揮し始め、生華民兵隊は後退中、北部は膠着状態」
 「了解」

518 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/21(月) 18:48:22.12 ID:i9OJOlZB.net
 実は涙田は人質を取る方の訓練を受けた事があった。もちろん行動隊でだ。自衛隊は、一般の自衛隊はそんな訓練はしない。
 それによると、説得工作は最初は突っぱねるとあった。他は色々あってストックホルム症候群とか小刻みな人質の釈放とか、多岐にわたる実戦的な訓練を受けたがここでは役に立たなかった。
 唯一役に立つ(と言うか役に立たない)のは狙撃した場合の反応だった。警察の記録等々では数秒でも犯人が生きていた場合、圧倒的に人質を道ずれに自爆するケースが多かった。
従って人道がどうとかより以前の問題として犯人を射殺すると決めたら即死させることが求められた。
 普通の手順は犯人の頭部を狙撃する事だった。以前実際にアメリカであったケースで(信じられないが)頭部に当たったのに当たりどころが悪くて即死しなかった場合があって、
現在では胴体もダブルタップ、つまり同時に三発撃ち込む場合が多い。もちろん三人でだ。これは一人が外しても残り二人が当てると言う意味合いも兼ねている。(必ず三人で三発と言う訳でもなくケースによる)
 頭部を狙うと言うのは防弾ベストの着用も想定しての事だった。
 実際テロの現場はハイテク化、重装備化が進んでいる。余談だがSATの教本はその点が大いに遅れている事が指摘されている。

519 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/21(月) 18:50:07.22 ID:i9OJOlZB.net
 ……まあ、トナカイには子供を人質に取る訓練を受けた事は秘密にしておこう。嫌われるのは嫌だしな……
 ちらっと狙撃も考慮したが、手にしているM16スナイパーカスタムは照準を合わせていない。
 戦闘中にサイトを合わせる事が出来るのは亡くなった巨匠大藪晴彦の小説の中だけで実際には無理だ。
 それでも不意打ちで男の方はなんとか殺せそうだが、こちらは一人だからもう一人、
ピコピコハンマーの看護婦がスイッチを拾い上げて押すのを阻止できるかどうかは微妙だ。百パーセントはない。
 それにスイッチを見捨ててワルサーを連射すれば二三人の子供は殺せる。
 悪夢の日曜日以来、女であっても全く油断は出来ないと涙田は思うようになった。
 涙田はそっと二丁のライフルを廊下に置いた。赤いサンタ服の左右のポケットに二丁のワルサーを移す。
 パイソンのほうが手になじんでいるが片手撃ちだと一抹の不安があった。357マグナムは魅力なのだがここはワルサーを使った方がいい。

520 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/22(火) 07:54:47.15 ID:ZHSK34gn.net
 鰻原の頭の中は「なんで俺が」「死にたくない」「敦子」がくるくる走馬灯のように回っていた。
 むしろ敦子の方が冷静だった。
 鰻原は生まれて初めて殺すとか爆破とかから離れて敦子と言う選択肢を選んで未来をゲットしたのに、その彼があてがわれたのがこれだった。以前の彼なら喜んだかもしれなかったが今は違った。
 そこにサンタが来た。
 驚愕の表情で、鰻原は「動くな」と言った。
 「男は動くなと言っている」
 「は?」
 「無線だ」チャイナマンは言った。
 鰻原はますます混乱して、「チャイナマン」と「クレイモアだ」と言う言葉をごっちゃに言おうとしてこう言ってしまった。
 「俺はクレイモアマンだ」
 「トナカイへ、俺はクレイモアマンだと言っている」
 鰻原はますます焦って、そんな紹介なんて全く必要ないのに敦子を指して
 「彼女は前田敦子だ」と言ってしまった。
 「前田敦子だとか言っている。おかしいらしい」
 「失礼な、前田敦子は本名よ」
 敦子は鰻原の背後からつかつかと歩み寄るとチャイナマンに「日暮里児童病院」のIDカードを見せた。
 「本名だった。ごめんごめん」

521 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/22(火) 07:55:28.23 ID:ZHSK34gn.net
 「チャイナマン、銃を捨てろ」
 「は?」
 涙田は確かに銃を隠し持ってはいたが、それをわざわざ認めて捨てるほどお人よし、ないしは間抜けではなかった。
 「どの銃を?」
 「え、えーと」鰻原は戸惑った。
 「子供を解放しろ、もうここにも警察が来るぞ」と涙田、説得の第一歩だ。
 「うるさい、チャイナマン、これが分かるか」
 「ああ、スイッチだな。クレイモア地雷の遠隔起爆の」
 「えっ、知ってるのか」鰻原はなぜかびっくりした。
 「ああ、多分、あんたはこれを押すだかなんだかしたら、人質が死ぬって言いたいんだろう」
 「ああ……」
 「おまえ、馬鹿だな。このクレイモア地雷はな、こう言う風にセットすると爆破した次の瞬間、お前の頭に本体が反動で飛んでくるぞ」
 「え?」
 「物理で習ったろ、作用反作用って奴だ。
 固定してないから前に破片を飛び散らすのと同じ勢いでお前の、多分頭の方に飛んでくるぜ、あれが」
 鰻原は、チャイナマンが何気なく指差した方をつられて見た。自然な成り行きだった。チャイナマンは見たとこ非武装で話も巧みだった。
 だが、次の瞬間動いたのは敦子だった。彼女は鰻原の方に飛んで行ってスイッチをたたき落とした。涙田は半ばまでワルサーを抜いていたが目を白黒させた。

522 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/22(火) 07:57:34.92 ID:ZHSK34gn.net
 やはり女は怖いと一瞬思った。多分隙を窺っていたのだろう。
 「あなたやめて」と敦子。
 「ばか、やめろ、それは」
 「こんな人質なんて」
 「それは、それは……」
 鰻原は空気が抜けたようになってすがりついて来る敦子を抱きしめた。もうテロをする気力はなさそうだった。
 「逮捕する」
 一応ワルサーを突きつけて、涙田は言った。もう鰻原は頷いて手を出してきた。
 萌未からウージーと交換で入手した手錠をはめると、鰻原はうなだれていた。敦子はそんな彼にすがりついて泣いた。

 「トナカイへ、子供主体の人質は奪還に成功! 成功!」チャイナマンは言った。
 「了解、打ち合わせ通り、国会議事堂正門前へ」トナカイも言った。

523 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/22(火) 22:10:58.22 ID:ZHSK34gn.net
 「それで基地が滝畑ダム(大阪河内長野市のダム)は駄目だと思うのよ」
 「でも、横浜の米軍基地内に秘密基地があると言うトナカイさんの計画もちょっと……」萌未が言う。
 「東京タワーの駐車場に月極めで軽トラを停めておくと言う私のアイディアはどうなったんだ」と倉田。
 「でも……あ、本部長、用意できたようです」とトナカイが言った。
 「よし、正門前へ」
 チャイナマン軽トラ、機動隊装甲車(特車)二台、機動隊バス二台で正門を目指す事になっていた。
バスには機動隊ではなくSATが各十名乗り、それぞれに国会前庭園に潜んでいたSATを拾っていく事になっていた。
 これは変に思われるかもしれないが急がない事になっていた。安全を確保しなければならない。
 「これで首相らを救出できれば全ては終わりだ。正門前にチャイナマン軽トラが到着すれば、
もはや撃たなくてもミサイルがいつでも国会議事堂に撃てると言う状況になり、
機動隊バスが人質を載せて警視庁に下がった後はもう、機動隊がいくらでもバスでも徒歩でも自転車でも来る事が出来る。勝負は決まった」
 「チャリンコはきついですよ、この上り坂は」と萌未。女はそんな所は実にクールだ。実際にはそれほどは上りではない坂だった。
 しかし、きついと言うのは実際になるのだった。

524 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/23(水) 07:22:45.84 ID:WGysxRoC.net
 上野
 上野公園前交差点で、大村はチーム大村(涙田が欠けている)をまとめ、西郷隆盛像の方向を伺った。
 彼らはブラボーツーだった。行動隊のブラボー中隊はすでに上野一体に展開を終えていた。ただ、中隊本部は装甲車が動き回っていて中隊の攻撃範囲から出てしまう事を恐れていた。
 彼らは基本、歩兵なので装甲車が本気で逃げたら追跡して仕留めるのは無理だった。まるで太古のマンモスハンターがマンモスを狩ったように、じわじわと輪を縮めるしかない。
 彼らの服は。大村と浜中が機動隊の制服、水村と大久保がダスキンの制服だった。機動隊の制服は全員分なかった。
 「おっ」大久保が言った。彼は警察無線を傍受していた。
 「なんだ?」
 「涙田の奴、やりました。子供の人質を確保」
 「そうか、大人の人質は所詮首相や大臣、いざという時の覚悟は出来ている人々だ。
 捨て殺しもこの国が滅びるかと言う時には仕方がない。それよりも当面の敵は装甲の獣どもだ」
 「涙田の奴、彼女をゲットしたらしいですね」と水村。LAWを持っている。主装備はLAWだった。
 「この短期間に職と彼女の両方をゲットしたんだからやるよ。惜しい奴だ……武闘の歴史に残る。球根栽培法に載るぐらいのもんだぜ」水村はさらに言った。
 球根栽培法と言うのは彼らの機関紙で、流石に「月刊行動」ではまずいのでこんな名前になっているので中身は球根のきゅの字もない。

525 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/23(水) 07:25:27.95 ID:WGysxRoC.net
 とにかく、これだけ派手にやっているのだから、このまま「ありがとうチャイナマン」で警察が見送ってくれる訳がない事ぐらいは誰も察していた。
 逮捕が待っている。
 涙田の性格からして暴れるとか逃げるとかはない。素直に手錠を受けるだろう。
 そして裁判、何人殺したかは知らないが判決は死刑しかないだろう……
 だから、彼らは今回の作戦では難しいだろうと言う上野公園方面に回って来た。涙田だけ、しんどいと言うのはチーム的には心苦しかった。
 今、彼らから見ると、「しのばず口」のほうの路上に装甲車一台、親衛隊50人がいた。
だが、それを遠巻きに群衆が囲んでいて、投石が始まっていた。親衛隊は盾で守っている。
 もう口コミで国会議事堂方面での戦闘で警察が押している様が伝わり、それ以前にチャイナマンが警視庁に来た情報が伝わっていた。
 婦人警官がウージーを持ってポーズしている画像が、あちこちで見せあわれた。
 それはやはりどんな言葉よりも警察有利を印象付けるものだった。
それと機動隊がウージーを装備し始めた時間が重なったために、警察が本気を出した感を市民に印象付けた。
 市民は、生華学会が政権を握ることを歓迎していなかった、むしろ逆で、学会帰れの声が高かった。

526 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/23(水) 07:28:03.13 ID:WGysxRoC.net
 「GOが出ました」と浜中。彼と大村はウージー装備だった。
 「よし、作戦は、まず爆竹を奴らと群衆の中間に投げ込んで牽制すると同時に群衆を遠ざける。
奴らが群衆に向け発砲する危険があるがこれは仕方がない。目をつぶるしかない。しかし、危険は低いだろう。
 それで空間が開いたらまずLAWで装甲車をやる。
続いてLAW装備の者は下がってウージーに装備を換える。ウージーの者はそのまま交戦に入る。4対50でも決してひるんではならん。涙田は1対10でもやったし、今も戦っている」
 大村は続けた。
 「はぐれた場合の再集合場所は上野公園の精養軒、マニアックな場所だが見通しが効いて下がるにもそこから攻撃に出るにもいい場所と言う事で、なにもそこで飯を食う訳ではない。
 最終集合ポイントは上野のハローワークだが、今そこに行っても誰もいないからな、注意しろよ」行動隊の作戦はすべてこうした打ち合わせが付いた。
 特に大村の指揮下ではその傾向が強かった。
 「警察はどうしますか」と水村。
 「出来るだけ戦わないようにとの指示だ。挨拶なんかする必要はないが、撃ちあったりするな」

527 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/23(水) 18:04:30.04 ID:WGysxRoC.net
 彼らが攻撃に入ると、もう親衛隊は総崩れだった。
 炎上する装甲車、同じウージーか、M16A1装備で武器で優位なはずなのに、そして50人もいるのに射的の的の様に親衛隊は崩れ去った。
 走り逃げる親衛隊に市民らは容赦なかった。
 あちこちでぼこられる親衛隊が見られた。それを止めに入っているのは警察だった。完全に朝とは立場が逆転していた。

 「ブラボーリーダーより各チームへ、離職票が届いた、離職票が届いたぞ」
 「ブラボーツー了解、もうですか?」と大村。離職票とは作戦完了を指す暗号だ。最終集合場所がハローワークだからか?
 「ああ、上野はもう解放だ。チャーリーと「りんご」からもいけたと言う連絡が来た」
 いずれも東京の解放目標だ。「りんご」はアップルの関連施設だった。どうして学会が占拠したのかは不明だが奪回の対象とされ豆タンクが回されているはずだ。
 もう東京は大丈夫だろう、大村は思った。

528 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/24(木) 05:54:59.42 ID:Tgge/H5W.net
 もう東京は駄目だ、と安藤は思った。
 もうほとんどの拠点が無線や携帯に応答しない。
 彼は意を決してはるかを救難センターから呼んだ。すぐに来いと強く言った。彼ははるかを強く愛していた。
 彼女は手術衣のまま移動指揮車に飛んで来た。
 「こんな時に唐突かもしれないが、あの話覚えてるか?」安藤は言った。
 「マグマ大使の不逮捕特権?」
 「違う」
 「最初は男の子がいいか女の子がいいか?」
 「近いがちょっと違う」
 「分かったわ、安藤病院(仮称)ね」
 「その(仮称)って言うのはなんだ? まあいい。もう包み隠さずに言うが、このままでは終わりだ。ここは落ちてしまう」
 「どこへ?」
 安藤は「陥落するとは」の軍事用語一言説明をしなければならなかった。
 「要するにだ、そのうちここのドアをチャリに乗ったポリがコンコンとノックすると言う事だ」
 その時、ドアがコンコンとノックされた。
 びくう!

529 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/24(木) 18:20:51.00 ID:Tgge/H5W.net
 恐る恐る安藤が出てみるとそれは運転兼護衛の兵で、朝から何も食ってないので何か食べてきていいかと言うのだった。
 ここらへんで今開いていると言えば国会図書館の食堂、通称国会食堂街だけで、あそこは7時まで開いているが、そこへ行くと言う事はついでに逃げると言う事だろう。
 安藤は、千円札を渡すと釣りも領収書もいらないと言った。

 「で、やっと本題に戻れるが……」
 「ええ、あなたが事務長で、院長は馬淵にやって貰いましょうよ。あいつは博士号持ってるわよ」
 「でも都市工学だろ?」
 「それは伏せておくのよ」
 「そんな、それはインチキくさいぞ」
 「院長が一万人以上殺しているって時点でもううさんくさいわよ。ショッカー直営病院かってレベルよ。改造人間にされるかってみんな思うわ」
 「でもまあ、我々の中で院長が務まりそうなのは奴だけだ、しかも奴は二種免許持ってるから病院の送迎バスも運転できるぞ」
 「それはいいわ、院長が送迎バスを運転してもなんら問題なしよ。春菜はヘルパー持ってるし、こんなふうに考えたら我々だけでどうにかこうにか病院できそうじゃない。
看護師ではあの前田(敦子)って子が釈放されたら来そうだけど、そりゃもっと看護師の募集はしなきゃだめだし、色々課題はありだろうけど、馬淵はそんなの考えるの得意中の得意よ、きっと。
 薬とか車いすとか意外な所から調達するのあの馬淵カップル絶対得意技よ」

530 :政教一致@大阪 ◆hprO1jFx.M :2014/07/24(木) 18:22:36.92 ID:Tgge/H5W.net
 「ああ、それに権田はもう駄目だ。あいつと心中する事はない。そこでだ、じゃーん。これに着替えて……」
 「なにこれ? 」
 「国会図書館の売店のおばちゃんの制服」
 「ど、どこで手に入れたの?」
 「国会図書館の売店で」
 「え?」
 「制服のコーナーにあった」
 「なんでも売ってるのねぇ」
 「俺は機動隊の制服に着替えるよ」
 「それも国会図書館の売店で売ってたの」
 「当然だろう、あそこで売ってない物は麻薬とか限られた物だけだ、基本なんでも売ってるんだ。すごい所だ国会図書館の売店は」
 「うちの病院にも支店を作ってもらえるよう交渉したらどうかしら」
 「そうだな、脱出先だがとりあえず例の全国町村会館を目指そう。開いてる部屋があるかどうかはインターネットから確認できるが今は取りあえず行ってみるしかない」
 「どうしよう、和室しか空いてないとか言われたら」
 「それはお布団でやるしかないだろう」
 全国町村会館にはきわめて少数ではあるが和室もあり、町村の役人には根強い畳で寝たいと言うリクエストがある事を物語っていた。
これは通常のビジネスホテルでは考えられない部屋の設計だ。
 ただ、八畳と十畳の部屋しかない。そのため二人で泊まると「とてつもないリーズナブルさ」になってしまうのだった。
(町村会館のリーズナブルさはそれだけで一本小説が書けるがそれは書かない。和室は素晴らしいロケーションで天国の泊まり心地らしい)

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