孤独のグルメのガイドライン 谷口26ー

397 ：水先案名無い人：2022/06/23(木) 05:16:32 ID:vSNgZzzG0.net

「えっと、ランチセットのトンコツの麺カタで、ミニチャーシュー丼でお願いします」
五郎はよどみなく言えたことを安堵し、お冷のコップに手を伸ばした。
が、注文取りの小太りの女性店員がそれを遮るように「麺の量は？」と聞く。
「お、大盛りで…」うつむく五郎。この店には半年前から何度も来ている。が、未だにスムーズに注文できない。仕方ないじゃないか。俺はアスペルガー症候群というやつなんだ。
「そうだ五郎、おまえはアスペルガーなんだ…」カウンター並びの作業服の男がボソボソとつぶやく五郎に気付き、丼から顔を上げ五郎を見る。
ガターンッ！急に立ち上がった五郎のせいで自身が腰掛けていたカウンター椅子が後方へ弾け飛ぶ。
「フレーッ！フレーッ！ご！ろ！お！頑張れ頑張れご！ろ！お！」虚空を睨み、叫ぶ。
もう止まらない。目をカッと見開きツバを飛ばしながら五郎は叫び続ける。
その様子を見て硬直する者、ニヤニヤと好奇の目を向ける者、スマホでの撮影する者…。
応援団のような振り付けで叫ぶ五郎の目にいつの間にか大粒の涙が光っていた。