あのさぁ・・・イワナ、書かなかった？のｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ37

水先案名無い人

気を取り直して立ち上がり、パジャマの袖で涙を拭いてからもう一度
鏡の中のまりなに向き合う。
つややかな長い髪、涼しげな目元にはまだ引ききらない涙がうっすらと
浮かび、濡れた瞳がその魅力をいっそう引き立たせていた。
額から両目の間にかけていったんすうっと落ち込んだ細い鼻梁はその
先端に向けて流れるように優美な曲線を描き出す。
柔らかそうな桜色の唇、頬から顎にかけての女性らしく滑らかな輪郭。

「ジーッ、なんでこっち見てんのかな？」
いつかの放送で聞いたおどけるような声を真似ながら鏡面に顔をぐっと
近づける。初めて間近に見るまりなの顔。かわいい。刺激が強すぎる。
俺は胸の高鳴りを抑えようと手を……やわらかい。
（まりなって意外とおっぱい大きいのね…）
驚きのあまり神速で手を離してすわわっポーズになる鏡の中のまりな。
その手のひらの中心には微かな突起の感触まで生々しく残っている。
深呼吸をして手を下ろした後、俺はようやく男物のパジャマの胸元を
下から押し上げている控えめながらも確かな膨らみに気が付いた。
それは神聖なものゆえ決して触れてはならぬ…老師っぽい声が響く。

続けざまに新たな問題が発生する。最悪だ。俺は尿意を催している。
……。
なんとか済ませることができた。好奇心に負けてビデを試すことだけは
最後の良心が許さなかった。これだけは胸を張って言うことができる。

なんかもう色々と無理だ。一刻も早くまりなにこの体を返そうと思う。
その願いを成就することによって俺のこのクソみたいな自我は消える
ことになるんだろうけど、むしろ願ったり叶ったりだ。
さて、俺はもう出かけなくちゃいけない。…まりなのお墓はどこですか。