【特集】奮闘、トイプードル警察犬飼育放棄の末、殺処分免れ

朝一から閉店までφ ★

2017/3/15 16:01
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出版された本を持つ鈴木博房さんとアンズ＝1月16日、茨城県ひたちなか市
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障害物を跳び越える訓練を披露するアンズと鈴木博房さん＝1月19日、茨城県茨城町の警察学校
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鈴木博房さんと嘱託警察犬に採用されたトイプードル「アンズ」＝1月19日、茨城県茨城町の警察学校

　小型犬ながら茨城県警の嘱託警察犬に採用されたトイプードル「アンズ」（雌、4歳）の奮闘が続いている。仕事ぶりは評価も高く、任務は2年目を迎えた。
飼育放棄され、殺処分寸前だったところを引き取られた成長の物語は本にもまとめられた。アンズの活躍ぶりを追った。

　▽おびえる小犬

　「ここまで来るのは長かった」。1月19日に警察学校（茨城県茨城町）で開催された嘱託式で、飼い主の警察犬指導士鈴木博房（すずき・ひろふさ）さん（66）
＝同県東海村＝は訓練を披露するアンズの様子に目を細めた。「アンズだ」と声を上げた警察学校の生徒に向かって走りだし愛嬌を振りまく姿に、鈴木さんは苦笑いする。

　生後3カ月の2013年3月、元の飼い主に殺処分の施設へ連れて来られ、おびえる小犬を鈴木さんは一時的に預かることを決めた。
「飼育放棄したい」と言い張る飼い主となだめる職員の押し問答を見ていられなかったからだ。「収容は心に深い傷を負う」。動物愛護推進員でもある鈴木さんに迷いはなかった。

　虐待があったのか、女性への恐怖心がとりわけひどかった。動物愛護のイベントに何度も連れて行き、
大勢の人に触れ合ってもらったが、おびえが収まらず飼い続けることにした。ちょうどその頃、自宅の畑に咲いていたアンズの花から名前を付けた。

　▽一発合格

　自宅で飼う警察犬のシェパードが足跡に残されたにおいを追う訓練「足跡追及」をしていると、アンズは興味を示した。しつけの一環で教え、大会にも出場。成績も良く、審査員から
「上級の資格取得を目指してみたら」と勧められた。折しも茨城県警では試験的に警察犬の募集を全犬種に広げており、受験すると審査は一発合格。昨年1月から採用された。

　嘱託式前の今年1月中旬、同県ひたちなか市の運動公園でアンズの訓練に立ち会った。昨年の嘱託式より、りりしくなった感じがする。

　アンズは足跡追及の部門で警察犬に採用されている。実際の捜査では、においから行方不明者や遺留品を捜し出すのだ。

　鈴木さんはグラウンドを歩き回り、においをつけ、100円玉を地面に落とした。雑草に隠れ、遠目にはどこにあるか分からない。「アンズ、探せ！」。懸命に地面を嗅ぎ始めたアンズは5分もしないうちに
「おすわり」の姿勢に。足元には目当ての硬貨があった。「体高が低く、鼻が地面に近いため、小さなものでも見つけ出せる」と鈴木さんは分析してみせた。

　▽目標は独り立ち

　昨年は鈴木さんの飼うシェパードと一緒に10件ほど出動した。捜査幹部も「昨年に比べて能力が格段についてきた」と目を細める。

　鈴木さんは出会ってからの思い出を「警察犬になったアンズ　命を救われたトイプードルの物語」という本にまとめた。
「ここまで人になれ、ほっとしている。今年は完全な独り立ちが目標かな」とアンズに語り掛けた。

　2月下旬、自宅を訪ねた。腕の中で落ち着いているアンズに、鈴木さんは何度も目をやり話しかけ、べたぼれの様子だ。前の飼い主は「本に書いてある通りに育たない」という理由で手放そうとしたという。
今は、鈴木さんの愛情を受け、警察犬になるまで成長した。捨てる神あれば拾う神あり。一頭でも多くの犬がアンズのように、幸せな家庭に巡り合えることを願っている。（共同通信＝水戸支局・酒井由人）
https://this.kiji.is/214639584303382529

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