【経済】「御社だけですよ。『値上げしたい』と言ってくるのは」…円安直撃でコスト増、中小企業「値上げ、思うようにできない」[12/09]

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　全国有数の鋳物産地、川口市。地元大手の辻井製作所の社長辻井一男さん（６６）は最近、納入先企業の担当者から告げられた。
「御社だけですよ。『値上げしたい』と言ってくるのは」

　ことし四月の消費税増税に、製造コストの１０％近くを占める電気代の高騰、急激な円安による原料などの価格値上げによる「三重苦」
に見舞われた。コスト増分を製品価格に上乗せできないかと模索するが、「値上げは思うようにできないのが地元業界共通の悩み」と
辻井さんは言う。

　世の中に出回るお金を増やして円安にし、大手製造業などが輸出を増やして収益を上げ、大企業と取引のある中小企業に流れるお金
も増える－。安倍政権による「アベノミクス」で描かれたシナリオだ。

　第二次安倍内閣が発足した二〇一二年十二月、一ドル＝八五円台だった円相場は今月五日、一二〇円台を突破した。だが急速な
円安は、原材料の多くを海外からの輸入に頼る中小零細企業に影を落としている。鋳物業界にとって主要材料の鉄の価格が落ち着いて
いるのが幸いだが、円安がそれを帳消しにした。

　川口鋳物工業協同組合が加盟社に行ったアンケートでは、今年九月以降に「原材料が値上がりした」と回答した企業（全体の４１％）
のうち、コストの増加分を製品価格に「転嫁できた」企業は９％で、５６％が「転嫁できない」と答えた。

　市内の鋳物業者らは「価格交渉にもちこんでも決定権は先方にある。大手企業優位、下請け不利の立場は変えられない」「経営は
厳しいが、業者間の競争が激しいので価格は上げられない」と打ち明ける。

　信用調査会社の東京商工リサーチによると、円安に起因する今年の倒産は全国で増加傾向にあり、前年比二・四倍のペースだ。
県内で倒産の理由に円安が絡んだケースは四件あった。

　急激な円安は製造業だけでなく、一次産業の現場も直撃している。

　寄居町で採卵養鶏業を営む一柳憲隆（のりたか）さん（４２）は「トウモロコシなどの輸入飼料は豊作で値下がりしているのに、円安で
相殺されてしまった」と嘆く。生産コストの半分以上はエサ代が占め、多くを輸入に頼る。「ことしは出荷している鶏卵の相場が高いので
ひと息ついているが、先行きは不安です」

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　四月の消費税率８％への引き上げは消費者心理を冷え込ませた。関連産業の裾野が広く、景気への波及効果が強いといわれる
住宅産業はその典型だ。

　十月の県内新設住宅着工戸数は前年比１７・５％減の四千六百七十八戸と、十一カ月連続で減少した。分譲住宅会社「ファイブイズ
ホーム」（行田市）はここ数年、値ごろ感のある二千五百万円前後の物件を武器に業績を伸ばしてきたが、ことしは販売戸数の目標を
７％程度下方修正した。

　社長の細井保雄さん（６６）は「モデルルームへの来客数は１５％減少したまま。消費者の慎重姿勢は当面続きそう」と困惑する。

　安倍首相は来年十月に予定した税率１０％への引き上げの一年半延期を表明したが、「再延期はない」と強調している。細井さんは
「できれば上げてほしくない。長期的な政策では、少子化対策に真剣に取り組んでもらわないと住宅業界は先細りになる」と懸念した。

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　安倍政治の二年間で国民の暮らしはどう変わり、何が変わらなかったのか。衆院選の争点の現場を歩いた。

ソース（東京新聞）　http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20141209/CK2014120902000129.html
写真＝鋳物の製造ラインで、高温で溶かされた鉄を鋳型に注ぐ注湯作業＝川口市で
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20141209/images/PK2014120902100046_size0.jpg