【国内】「究極の暗号技術」のぞき見不能な量子暗号で個人情報守る=まず電子カルテ

2014/05/27 日本経済新聞　朝刊
　情報通信研究機構は原理的に盗聴が不可能とされる「量子暗号」を使い、電子カルテなどの個人情報を強力に保護するコンピューターシステムを開発した。
患者など利用者がスマートフォン（スマホ）に入れた暗号を解く鍵がないと内容がわからず、のぞき見や個人情報の流出をほぼ防げるという。
まず医療機関の情報向けに５年後の実用化を目指す。

　ＮＥＣ子会社のＮＥＣ通信システム（東京・港）と共同で、暗号化に必要な装置などを試作した。
新技術を使えば、診療情報を既存のインターネットで別の医療機関に送ったり、遺伝情報など外部に漏れてはならないデータを電子カルテに記入して保管したりできる。

　量子暗号は膨大な時間さえかければいずれは解読できる従来の暗号とは発想が根本的に異なる。一部の研究機関などが専用の回線を設置して、
データ通信に利用している。利用拡大に向けた研究開発が進んでいる。

　開発したシステムでは、まず専用の装置で保護したい電子カルテなどの情報を暗号化する。暗号を解くのに必要な鍵も一緒に作り、
専用の回線につながった暗号管理用のパソコンに送る。このパソコンから患者のスマホに鍵を渡す。患者が来院したときに、暗号解読用のパソコンに
スマホをかざすと、鍵が送られてカルテの内容が見えるようになる。

　暗号と鍵は一度使うと廃棄し、使うたびに新たに作るようにし、安全性をさらに高める。導入費用は数千万円で、現状の暗号化技術と同程度という。
現状では定期的に暗号システムを更新する必要があるが、新技術はいったん導入すれば使い続けられる。
（中略）
匿名患者のカルテを数多く集め、このビッグデータを解析することで、治療法の効果などが判定できるようになる。

　政府は国民１人ずつに共通番号をつけるマイナンバー制度を２０１６年に利用開始する予定だ。診療情報など医療での活用は個人情報流出の危険性が
あって対象外になっているが、量子暗号を使えばこうした危険を防げるとみている。
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGG25009_W4A520C1TJM000/