【アリスギア】アリス・ギア・アイギス Part1451

「隊長、これ好きだったよね…」
隊長が好きだったアイスを見るたび、小芦睦海は今は亡き隊長を思い出してしまう。
少し子供っぽい笑顔でこれ好きなんだと笑いながらいつも私の分まで買ってくれた。
兄のように、もうひとりの父のように慕っていた隊長。
時には少し背伸びした感情も無意識に抱いていた。
でもそんな隊長ももういない。
子供っぽい笑顔で私にアイスを買ってくれることも二度とない。
隊長の好きだったアイスを見るたびにその事を否応なしに認識させられ酷く頭が痛む。
今日のように暑かったあの夏の日、シタラさんがメントスとコーラで遊んでいたところに隊長と美幸さんが通りかかり、
冗談のような偶然が重なった結果隊長は爆発四散してしまったらしい。
わけもわからないまま出席したお通夜で憔悴しきった文嘉さんから聞いた話だ。
シタラさんはあの日から実家の自室に籠ってしまった。
美幸さんは楓さんに刺されて亡くなった。
隊長を慕っていたアクトレス達はほとんどが引退してしまった。
叢雲出身のリンさん、怜さん、綾香、愛花は伝手で別の事務所に移籍したが程なく引退してしまったらしい。
今の成子坂には文嘉さんとゆみさんと私の3人しか所属していない。
文嘉さんは少し様子がおかしく、虚空に向かって隊長、シタラ、と話しかけているのをたまに見かける。
ゆみさんは夜の仕事も辞めアクトレスに全力を注ぐようになり恐ろしく強くなったが
いつも焦ったような表情で以前のような気さくさと面倒見のよさは消えてしまった。
私は惰性でアクトレスを続けているが身が入っていない自覚がある。
隊長、私はいったいどうすればいいのかな。
そんなことばかり考えてしまうから今日みたいな暑い日は嫌いなんだ…