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【少女前線】ドールズフロントラインPart594【ドルフロ】

329 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2019/06/09(日) 21:33:15.47 ID:Zn04OVvC0.net
深刻な崩壊液の被曝によって、一〇〇式の意識は長い間昏睡状態に陥っていた。
時々正気を取り戻しても、その度にグリフィンから当時の事情聴取や、崩壊液被曝者の研究に協力させられる。
一〇〇式はもはや心身共に限界を迎えていた。
物理的に破壊されかかっている脳は幼児退行を起こし、正気に戻る頻度も段々と減っていた。
医師からは、次にまた正気に戻れる保証はないと宣告されている。

「指揮官、おはぎできましたねぇ!」
「ええ……今食べてあげるわね」
「ですねぇ!」

おはぎを食べるために、指揮官は指輪を外す。
かつて、信頼と愛情を込めて一〇〇式に贈ったはずの指輪は、本来戦術人形である廃人同然になった一〇〇式を繋ぎ留める鎖となっていた。
運命の赤い糸が繋がっていたはずなのに、今の指揮官の小指は、あんこに塗れた鎖が一〇〇式と繋がれていた。

「一〇〇式ちゃん……私……もうこんな貴方見ていられない……」

愛を誓った、聡明で、慎重で、そして勇敢だった一〇〇式はもうそこにはいない。
今の一〇〇式を無理に生かしておくことが、一〇〇式を貶めていることを指揮官は自覚していた。
二度と正気に戻れなくなれば、一〇〇式には実験動物としての末路しかない。
今でこそまだ隣にいて、支えてあげられるが。
実験動物には、汚物の世話も、食事の世話も必要ない。いつ自分が異動させられ、ベッドの上の一〇〇式が檻に入れられるかなど分からない。
明日かも、明後日かも。
それとも、今この後数分後かもしれない。
あんこを洗い流す手は、脳が予測するいつかはあり得る未来のシミュレートに震えていた。

「指揮官...つらいです...ぎゅーってしてください...」

一〇〇式の目に、一瞬だけ知性の光が宿った……ように、見えたのを指揮官は捉えた。
指揮官の汚水を拭った手には、嵌め直した指輪が戻っていた。
その主たるものとして、誓約者の許可があれば、人形としての制約を解除できるというものがある。
人が勝手に人形を殺すことは防衛システムによってできない。
だが、兵器に所有者が居るのならば。
自殺することを所有者から命令されるのは、銃の引き金を引くのと同義。
また、兵器に勝手に殺されるのは所有者の損失にもなるため、自衛のためのカウンターアタックも許される。

つまりは。今。指揮官は。
一〇〇式の首を絞めて殺すことを考えたのだった。

「私は指揮官……私は……一〇〇虐のためだけに生まれてきたの……それが、一〇〇式ちゃんの命令なら……」

どう考えても、そんな命令をされてなどいない事は理解できていた。
だが。
愛という、人間に不要な感情は、人間の脳に深刻なバグを発生させたのだった。

指揮官のか細い、しかし一〇〇式を遥かに超える力を出せる手が、一〇〇式の首に回る。
一〇〇式の息遣い、暖かさ、脈拍。
一〇〇式が生きているという実感が、指揮官の指にある様々な感覚を通じて、左脳へと流れ込んだ。

「……一〇〇式ちゃん。ぎゅーって……して、あげる」
「...ありがと......指揮官」

銃弾の音に、警報が鳴り響き。
息絶えた指揮官と、マインドマップが修復不可能なまでに、銃弾で物理的に電脳を破壊した一〇〇式を警備員が発見するのは、それから何時間も後のことだった。
残っていた一〇〇式の躯体から復元できた動作ログからは、指揮官が何度も一〇〇式の絞殺を試行し、失敗したであろうことが分かっただけ。
なぜ指揮官が一〇〇式を絞殺したのか、自らの命を絶ったのかは判明しなかった。

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