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黒猫のウィズ 精霊を性的な目で愛でるスレ61

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/06/22(月) 02:57:11.66 ID:TAU0KcTs.net
「ねぇ、ディート……。どうして最近僕をかまってくれないの?」
ディートリヒの軍服の裾を握りしめながら、ユペールは涙ながらにつぶやいた。
彼のしわひとつ無い布地の端が、ユペールの指の形に歪む。

ディートリヒは顔を赤らめ涙を流すユペールに振り返り一瞥すると、
その手を振り払い足早に去って行ってしまった。

「嘘だよね……?ひどいよ、ひどいよディート……。」
ユペールにとってこんなことは今までに無かったことであった。
たしかにディートリヒは人間として大きく歪んでいる。
しかし、歪んでいながらも彼の自分への愛情は嘘偽りのないものだとユペールは信じてきた。
信じてきたからこそ、純粋な少年の心は傷つき、悲しみは膨れ上がるばかりであった。

(パパも、ディートも……僕からいなくなるんだ。結局僕は、いつまでもひとりぼっちなんだ……。)
かつてディートリヒが買い与えてくれたお気に入りの服の袖を涙でぐしょぐしょにしながら、
ユペールは自分の部屋へと戻っていった。
今すぐにでも眠って、こんなつらさから逃げたいとユペールは思っていた。

だが、そんな憔悴しきった彼を邪なる神は放っては置かなかった。
淫靡な姿のそれはユペールのベッドに腰掛け、彼を誘う。
「はいは〜い、そこの可愛いお嬢さん……え、男!? ま、まぁどっちでもいいわ! ねぇ、私と契約しない?」

突然のことにユペールはきょとんとしていたが、不思議とその異形の者に恐怖を感じてはいないようだった。
そんな様子の少年を前に、にたりと笑いながら邪神は続ける。

「あなた、あの優男を独り占めしたいんでしょ? いいわよ、私が力を貸せばそんなの楽勝なんだから」
その甘い甘い言葉にユペールは一瞬顔をハッとさせる。
なぜ目の前にいるこの女が自分とディートリヒのことを知っているのか、どうして自分の心の中を覗けるのか、
いつもの聡明なユペールなら感じるであろうそんな疑問も、今は浮かびようがない様子だった。

「ホント……? ホントにディートが僕だけのものになるの……?」
縋るような目で自分を見つめるユペールを見て、邪神は己の勝利を確信する。

「ええ、あの男を貴方の思い通りに動く人形にしてあげるわ。貴方しか愛さない、愛すことのできない完璧な人形よ? 素敵でしょ」
その言葉にユペールは恍惚の表情を浮かべた。そして、その夢の様な光景を想像し、身を震わせた。
だが、次の瞬間。ユペールの中にある違和感が生まれた。
(違う、そんなの違う……。 僕の思い通りになるディートなんて、そんなの……ディートじゃない……)

急に憑き物が落ちたかのように頭がクリアになるのを感じると、ユペールは邪神に言い放った。
「違う、そんなのいらないよ! 僕の好きなのは自分勝手でワガママな、そんなディートなんだ!」

「えーもう!あとちょっとだったのにぃ〜!! こうなったら力づくで契約を……」

だが次の瞬間、3チェイン極大全体攻撃が放たれ、どこからとも無くディートリヒの声が
「破ァ!!」
邪神は「どうしていっつもこうなるのよ!」と叫びながらはるか地平の彼方へ吹き飛ばされてしまった。

「ディート……!」
ユペールは自分の危機にかけつけてくれたディートに抱きつき、いつものように身をすり寄せた。

「ここの所あなたに邪気が取り憑いていた様子だったので警戒していたのですよ。まぁ、思った通りだったようですが。」
そう言いながらディートはユペールの髪をなでた。

「まったく、部屋がこうも破壊されてしまっては寝ることもできませんね。 ユペール、今日からは私の部屋で一緒に寝なさい。」
ディートはやっぱり自分勝手だ、そう思いながらもユペールは胸が温かくなるのを感じすにはいられなかった。

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